アリアナ・グランデ、トクマルシューゴ、METALLICA…トイ楽器が広げる、表現の可能性

トイミュージックの中心地、フランス

 世界的に見ても、ラウンジミュージックのオルタナティブなスタイルとして定着しているトイミュージック。その中心地ともいえるのがフランスだ。70年代よりカリスマ的な人気を誇るフランスのアヴァンギャルド音楽家、パスカル・コムラードにはじまり、ヤン・ティルセンが音楽を担当した映画『アメリ』(2001年)は、それまでどこか音楽マニア向けでもあったトイミュージックを幅広く知らしめるきっかけとなった。

KLIMPEREI / FIND TWISTS

 かわいいだけではない、奇妙でどこか不穏な雰囲気をも漂わせるのは、Klimperei。おもちゃらしく、ウィットに富んだ面白さを無邪気に教えてくれるのは、パスカル・アイエルブだ。

Toy music - Pascal Ayerbe

トイ楽器とYouTube

 耳だけではなく、目でも楽しめるのがトイ楽器の魅力。そう、YouTubeとの相性は抜群だ。不自由でもあるこの楽器たちを操るには、演奏力はもちろんのこと、何よりアイデアで昇華させるセンスが問われる。

SMELLS LIKE TEEN SPIRIT (NIRVANA) - ROCK'N'TOYS SESSIONS (THE WACKIDS)

 THE WACKIDSは、トイ楽器を使ってロックの名曲をカバーするバンド。大の大人が子ども用のトイ楽器を懸命に演奏する姿は滑稽でもあるが、それがもし泣く子も黙る一流ミュージシャンだったら……?

Mike Portnoy: 'Name That Tune' on Hello Kitty Drum Kit

 ハローキティのドラムセットを夢中に叩いているのは、ローリングストーン誌「最も偉大な100人のドラマー」第8位、言わずと知れたプログッレシブメタルバンド、Dream Theaterの初代ドラマー、マイク・ポートノイだ。

 これは、「Loudwire」というラウドロック、HR/HMを中心としたアメリカのロックメディアの企画であり、他にもザック・ワイルドやジョン5といった、メタルプレイヤーがかわいらしい楽器を本気で弾き倒す姿を見ることができる。

 さて、この記事の冒頭で紹介したアリアナ・グランデのパフォーマンスだが、テレビ司会者でありコメディアンでありミュージシャンでもあるジミー・ファロンの『ザ・トゥナイト・ショー』における悪巧みは、今にはじまったことではない。過去にはアデルやエド・シーランも、彼と一緒に少し変わった趣向の演奏を披露しているのだが……?

Jimmy Fallon, Metallica & The Roots Sing "Enter Sandman" (Classroom Instruments)

 トイ楽器でMETALLICAを演奏する陽気なおじさまたち……、と思ったら、本人だった。おもちゃのサクソフォーンを吹きながら熱唱する、ご機嫌なジェイムズ・ヘットフィールドも相当なインパクトだが、その後ろで黙々と鍵盤ハーモニカを吹いているカーク・ハメットのご満悦な表情に、見ているこちら側も思わず笑みがこぼれる。

 子どもから大人、はたまた強面のモンスター級メタラーまで。トイ楽器には、普通の楽器では得られないような、小さな幸せを運んでくれる魅力があるように思うのだ。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

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