『いぬやしき』VRはメディアミックスの新たな手法にーーフジテレビPが明かす、映画×VRの可能性
善と悪の描写が両方向に振り切れている
ーー『いぬやしき』というコンテンツそのものの魅力についても教えてください。
梶本:原作者の奥浩哉先生は、3DCGを漫画に取り入れた草分け的な作家さんで、『01 ZERO ONE』や『GANTZ』などの作品でも非常にリアリティのある描写をされてきました。一方で、主人公たちはある日突然、とある非日常的な出来事に巻き込まれてしまい、そこからどう行動していくかを問われます。冒頭から一瞬で引き込まれる奇想天外な展開、メカニックのカッコよさ、迫力のあるアクションなどが大きな魅力であるのはもちろんですが、人間ドラマや社会風刺的な部分もバランス良くちゃんと描かれていて、そこが素晴らしいと思います。『いぬやしき』もリアルな人間ドラマとエクストリームなアクションの融合がすごくて、現実には起こり得ない話なのに、主人公たちの人物像がしっかりとしているから、「もし自分が同じ立場になったら、力を善と悪とどちらに使うのだろう」と考えさせられる説得力があります。
北野:“ジジイと高校生”という表象もそうですが、善と悪の描写が両方向に振り切れているのが面白いです。ただ、どちらも自分だけのためではなくて、誰かのためだったり、何かを背負っているところに、ドラマの厚みを感じます。ひとつひとつのバイオレンスに宿っているものに、思いを巡らせてしまいます。
梶本:映画では、主人公の犬屋敷とライバルの獅子神をより対比的に描いていて、ふたりの性格の違いが能力の使いこなし方に影響を与えています。奥先生から「原作とは異なるラストを描いてほしい」とリクエストがあったため、映画版のラストはあえて違う展開にしているので、どうなるかはぜひ劇場で確かめてほしいです。
北野:今回の映画は、レイティングがG(全ての年齢層が鑑賞可能な区分)なのがうれしいですよね。銃を打つ瞬間にカットを変えたりして、うまくクリアしているのと同時に、幅広い観客が楽しめるものになっています。
梶本:佐藤監督は、『アイアムアヒーロー』がR15指定だったことからもわかるように、その気になれば振り切った表現ができる方ですが、今回は限界ギリギリのところでGを狙って制作してもらいました。映倫と何度も細かく確認をして、迫力を保ちながらも、誰でも観ることができる作品に仕上がったと思います。ジェットコースターのような空中戦は、お子様が観てもすごく楽しいと思います。