『リラの花咲くけものみち2』は青春譚から“命”の物語に 山田杏奈が体現した喪失と再生

 折原牧場での全頭殺処分の現場に聡里が立ち会うということは、彼女自身が本来抱いていた夢を早々に打ち砕かれるという描写でもある。シーズン1の最終話である第3話において、聡里は実習で、折原牧場の牛・ミドリの出産に立ち会っていた。ミドリが産んだ子牛は、立ち会ったお礼の意味を込めて聡里の名前から「サト」と名付けられた。

 それを目の当たりにした彼女は、残雪(萩原利久)に電話で会話する。「今日生まれた子牛がやがて大きくなって、母牛となって、また新しい命を生み出す」「生命の循環だね」「そう、命のバトンタッチ、見届けていきたいなあって。あの子牛の未来を。牧場の未来を」と。それによって彼女は「大動物の獣医師になる」という決意を固めたのである。そしてまさに、ドラマの時系列としては2年半経ったシーズン2において、サトが母牛となり出産を待っている矢先に牧場内の口蹄疫の感染が発覚し、サトが「疑似患畜」となったために、聡里はその最期を看取ることになる。

 残雪の言う「動物の命は神の領域にある。最初から決まっているんだ。その中で、運命に従って生きればいい。獣医師もその中でやれることを一生懸命やればいいんじゃないかな」という言葉をもっててしても、受け入れることは容易いものではないだろう。

 シーズン1で印象的だった北海道の一面の雪景色の美しさと対比するような、シーズン2における、牛全頭の殺処分を終えた牧場の、消石灰が撒かれた一面の「無」の光景が悲しい。忘れられない光景の中に、その後の残雪の「人間と動物が幸せに共存していくために、僕たちは永遠に考え続けなければいけないんだと思う」という言葉が木霊する。

 変わり続ける日々の中で、オープニングで示されるリラの花が咲く1本道だけは唯一変わらずそこにある。それは、彼女たちが出会った北農大学近くの白樺並木であり、シーズン1第3話終盤の聡里の言葉を借りれば、彼女にとっての「自らが選んだ自由な道」そのものなのだろう。そして「あなたを待ってます」という花言葉を持つ白樺の並木道は、祖母・チドリを亡くした聡里を迎えにきた残雪と聡里が「ただいま」「おかえり」と戯れに言い合った場所でもある。

 チドリ亡き後の聡里にとって、彼女が帰る場所は、彼女を笑わせにやってきてくれる仲間たちの優しさであり、今は亡き祖母と母の味であるレシピ通りのオムレツの味だ。彼女は自分で選んだ一本道をこれからもずっと歩いていく。どんなに道が険しくとも。その先を、できることならこの先も、見つめてみたいものである。

■放送情報
ドラマ『リラの花咲くけものみち2』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜22:45放送(全5回)
NHK ONE(新NHKプラス)にて同時・見逃し配信予定
出演:山田杏奈、當真あみ、萩原利久、上川隆也、佐藤寛太、菊池日菜子、山崎静代、甲本雅裕、温水洋一、風吹ジュン
原作:藤岡陽子
脚本:水橋文美江、今西祐子、木滝りま
音楽:平井真美子
主題歌:にしな『つくし』
演出:谷口正晃、宮下直之
制作統括:黒沢淳(テレパック)、熊野律時(NHK)
プロデューサー:近見哲平、山本梨恵
写真提供=NHK

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