『Michael/マイケル』が示した“父”との確執と栄光 ライブ音源で描かれる“独り立ち”

『Michael/マイケル』が示した父との確執

 ジャクソン5やジャクソンズを含め、世界を変えたマイケルの全27曲が映画館の大音響で聴くことができるのは、この映画の最大のポイントだ。「Beat It」のMVに本物のストリートギャングが出演したことは有名で、そのアイデアがどこから生まれたのか。また、アルバムタイトルに『Thriller』と付けられた経緯や、ゾンビダンスで有名な楽曲「Thriller」のMV撮影のエピソードなど。有名な逸話がいくつも描かれている。マイケルが「Thriller」のデモ音源などを制作したホームスタジオのシーンでは、壁に飾られた発明家エジソンとジョン・レノンの言葉など細部まで再現された。また楽曲制作に悩んだマイケルがチャネリングを試みようとして兄弟に笑われ、「こうでもしなきゃ全部プリンスに持っていかれちゃう」と話すシーンなど、小ネタもちょくちょく挟み込まれていて、当時の音楽シーンを知るものは思わず笑ってしまうだろう。こうしたトピックの数々から感じるのは、マイケルの類い希なる感受性の豊かさと、いかに閃きやインスピレーションを大事にしていたかということ。マイケルの制作の原点的なものに触れることができるほか、繊細であったが故の苦悩を実感できるのではないだろうか。

 映画では楽曲の貴重なライブバージョンも使われていて、先行してオリジナルサウンドトラックもリリースされている。特に「I’ll Be There」(ジャクソン5の)でのマイケルのボーカルには鳥肌が立つ。「Ben」は1981年のU.S.Tourのバージョンが使用され、観客の大歓声もそのまま使用されている。当時の熱気が非常に伝わってくる聴き応えのある音源だ。ほかにもジャクソンズの「I Want You Back~ABC~The Love You Save」(メドレー)も1981年のU.S.Tourのバージョンが使われ、映画のラストを締めくくる「Bad」は2012年のリマースターバージョンだ。また劇中で流れる音源のボーカルは、マイケル役を務めたジャファー・ジャクソンやジュリアーノの声もミックスされているとのこと。「Who's Lovin' You」や「Don't Stop 'Til You Get Enough」などはジャファーやジュリアーノが歌っているとのことで、これは驚きのクオリティーだ。これを聴くためだけでも、何度でも劇場に足を運ぶ価値がある。

 リアルさの追求という点は、『ボヘミアン・ラプソディ』を手がけたグレアム・キングのプロデュースだけあって一日の長がある。マイケルが実際にパフォーマンスしたパサデナ・シビック・オーディトリアムで撮影された「Billie Jean」のシーンや、ラストの英ロンドン・ウェンブリー公演のシーンも圧巻。様々な映像資料で観たことのある有名な場面が、衣装も含めて緻密に再現されていて実に見応えがある。

 また、CM撮影の事故で火傷を負ったエピソードも克明に描かれている。当時は事故をきっかけにした“薬物依存”ばかりに焦点が当てられたが、こうした悲劇的な事故があったことを踏まえると、致し方のない部分もあったのかもしれないと思わせる。ほかにも『ピーターパン』に心酔していたことも端々で描かれ、動物や子どもたちを集めて自宅にネバーランドを作ったことなど、当時は奇異に映った様々な行動に対する見方も少し変わってくるかもしれない。

 “キング・オブ・ポップ”と呼ばれた稀代のスーパースター=マイケル・ジャクソンが、どのように誕生したのか。多くのことに傷ついた悩み多き青年が、ジャクソン家という呪縛から解き放たれ、ただのマイケルとして独り立ちする姿が、数々の名曲とエピソードとともに描かれている。

■公開情報
『Michael/マイケル』
全国公開中
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・ヴァルディ、コールマン・ドミンゴ、ニア・ロング、ケンドリック・サンプソン、マイルズ・テラー、ローラ・ハリアー、ケイリン・ダレル・ジョーンズほか
監督:アントワーン・フークア
脚本:ジョン・ローガン
製作:グレアム・キング、ジョン・ブランカ、ジョン・マクレイン
配給:キノフィルムズ
提供:木下グループ
®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.michael-movie.jp
公式X(旧Twitter):https://x.com/michaelmoviejp

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