『日本三國』の過酷な世界はなぜ“地続き”に感じられるのか 近未来日本の“嫌な説得力”

TVアニメ『日本三國』は漫画アプリ『マンガワン』と『裏サンデー』で松木いっかが配信している同名漫画(小学館)をアニメ化したものだ。
舞台は近未来の日本。国家形態が崩壊し文明が明治初期レベルまで後退した日本は、軍閥割拠の戦国時代を経て、大和・武凰・聖夷が覇権を争う三国時代となっていた。

大和暦56年。大和・愛媛郡に生まれた三角青輝は、優秀な頭脳の持ち主。15歳のときに司農官となり、幼なじみの小紀と結婚し、国家のために農政で身を立てようとしていた。しかし、町民に暴力を振るう税吏に意見した小紀は、そのときに内務卿・平殿器を侮蔑する「デブ」と発言したことが理由で処刑されてしまう。怒りに震える青輝だったが、平殿器に冷静に意見し「デブ」と発言したのは税吏だったことを証明することで税吏を処刑させる。それから3カ月後、青輝は小紀の願いだった日本を統一して三国時代を終わらせるため、故郷を出て首都の大阪を目指す。
本作は近未来の日本を舞台にした戦記もので、『三国志』のような闘いが展開される。各県の地形を利用した軍隊の戦いを見せるという戦略シミュレーションゲーム的な面白さが『日本三國』の見どころだが、その戦術の多くが中国の『三国志』や日本の戦国時代におこなわれた戦術となっており、会話の節々に孫子や老子の格言が登場する。

その意味でとても古風な物語なのだが、近未来が舞台のせいか、登場人物の口調が時々ラフになるのが絶妙で、「マジで?」「ミスった」「ごっつええやん」といった砕けた言葉が混ざることで、これは時代劇ではなく今の日本の現実と地続きの近未来の話なのかと実感させられる。
そして、映像表現もとてもユニークだ。原作漫画は、輪郭線が太いペンタッチとベタ塗りが多用され、普通の漫画ならスクリーントーンなどを用いて中間色で表現する部分を細かい斜線で表現している。そのため、白と黒のコントラストがはっきりとした画面構成となっており、ページ全体の圧がとても強い。
同時に、台詞やナレーション、効果音に用いられる言葉の圧も強いため、読むのにものすごくエネルギーが必要となる。原作漫画の過剰な作画表現や文字情報の持つ濃厚な手触りが、アニメでは忠実に落とし込まれている。そして色がモノクロからカラーとなり、音声が加わったことで、漫画の持っている迫力を損なうことなく、アニメならではのポップでテンポの良い仕上がりとなっている。

それにしても、『日本三國』の第1話は二つの意味で衝撃だった。
一つは、冒頭で語られる世界観。
令和末期、第4次産業革命において日本は諸外国に圧倒的大敗を喫し、少子高齢化が加速したことで教育レベルが大幅に低下して、衰退の一途を辿った。
そして、世界中で核大戦が勃発。日本は戦地にこそならなかったが、外国からの多くの難民が溢れ、感染症が蔓延し大地震が相次ぐ。そして、政治・経済は腐敗し、富は政治家、資本家などの「上級国民」と揶揄される者たちに集中する中、民衆の怒りが爆発し、「暴力大革命」が起こる。
その結果、国家形態は崩壊。人口は数年で10分の1以下に激減し、文化、インフラ、テクノロジーが失われ、事実上の日本滅亡となり、やがて三国時代となる。
この令和末期に日本が滅亡し、三国時代になるまでの流れが、第1話の冒頭で、勢いのあるポップな映像でテンポよく解説されていくのだが、いわゆるディストピアSFで描かれる近未来の日本の姿として嫌な説得力があり、背筋が寒くなるものがあった。




















