中村悠一は声優界屈指の“名バイプレイヤー” 『黄泉のツガイ』『日本三國』で際立つ助演力

中村悠一は声優界屈指の“名バイプレイヤー”

 デラと賀來泰明に共通しているのは、主人公や視聴者が見ている世界の解像度を一段引き上げる存在である点だ。ただし、その役割は異なる。デラは安心感と底知れなさを併せ持つ案内人として物語の視界を広げ、賀來泰明は会話に知略戦の緊張感を与えることで作品世界に厚みをもたらしている。

『黄泉のツガイ』©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX, Project TSUGAI

 デラは東村の守り神である「左右様」を呼び起こさせる人物である。デラが印象的なのは、彼が状況を理解している大人だからである。中村が落ち着いた低音で演じると「デラがいればなんとかなる」という安心感が生まれる。さらに、頼もしさだけでなく「まだ見せていない情報や能力がある」という底知れなさにもつながっている。また、シリアスな展開が続くなかでも、デラは軽妙なやり取りによって物語に適度な緩急を生み出している。中村の演技そのものが、作品全体のバランスを支えるうえでも欠かせない要素となっているのだ。

『日本三國』©松木いっか/小学館/日本三國製作委員会

 一方、賀来泰明においては、軍師という立場ゆえに存在感が極めて大きい。中村の演技は、強く威圧することで賀来を有能に見せるのではなく、感情を抑え、言葉を急がずに置くことで「常に数手先まで考えている人物」という印象を作る。声を荒らげないからこそ、賀来が何かを断定したとき、言葉に重みが生まれるのだ。

 さらに賀来には、関西弁の柔らかな響きや軽妙な受け答えによる親しみやすさもある。冗談めいた口調の裏でも思考を止めていないように聞こえるため、知略を日常的に使って生きている人物に見える。主人公の青輝だけが突然優れた知略を発揮するのではなく、すでに賀来のような軍師が存在していることで、この世界には軍略や政治判断の歴史があるのだと感じられる。主人公を引き立てながら世界観の厚みまで支えている点こそ、賀来というキャラクターの重要な役割だろう。

 中村悠一は落ち着いた低音を基調に、語尾の締め方や間、声の温度を細かく変えることで、緊張と緩和を1人の人物の中に共存させている。普段の軽妙さが視聴者を安心させ、その声から余裕が消えた瞬間に危機の深刻さを伝えるのである。

『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 この振れ幅の大きさは、代表作のひとつである『呪術廻戦』の五条悟役にも通じる。虎杖たち生徒の前ではデラのような飄々とした一面を見せるが、ひとたび戦闘が始まると「現代最強の術師」として圧倒的な存在感を放つ。Netflixで配信が始まった劇場版総集編『呪術廻戦 懐玉・玉折』でも、その両面性を改めて確認できるだろう。

 『Re:ゼロから始める異世界生活』のラインハルト役では、同じ最強格でも五条のような奔放さではなく、誠実さと揺るぎない安心感を表現している。役柄に応じて存在感の質を変えられることも、中村の大きな魅力である。

 中村の演技は、主人公を支え、世界観に説得力を与え、ときに物語の方向性そのものを左右する。その「助演力」こそが、多くの作品で中村が求められ続ける理由なのだろう。次に彼の出演作を見るときは、主役の背後で場面の空気を変える「助演力」にも注目してみてはいかがだろうか。

■放送情報
TVアニメ『黄泉のツガイ』
TOKYO MX、BS11ほかにて、毎週土曜23:30〜放送
キャスト:小野賢章(ユル役)、宮本侑芽(アサ役)、中村悠一(デラ役)、久野美咲(ガブちゃん役)、小山力也(右役)、本田貴子(左役)、島袋美由利(ハナ役)、諏訪部順一(ジン役)
原作:荒川弘(掲載 月刊『少年ガンガン』スクウェア・エニックス刊)
監督:安藤真裕
シリーズ構成:高木登
キャラクターデザイン:新井伸浩
音楽:末廣健一郎
プロダクション・スーパーバイズ:ボンズ
アニメーション制作:ボンズフィルム
オープニングテーマ:Vaundy「飛ぶ時」
エンディングテーマ:yama「飛ぼうよ」
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX, Project TSUGAI
TVアニメ公式サイト:yominotsugai.com
TVアニメ公式X(旧Twitter):@tsugai_official
TVアニメ公式TikTok:@tsugai_official
原作公式X(旧Twitter):https://x.com/TSUGAI_GANGAN

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