『風、薫る』見上愛にハマった人は必見 『光る君へ』『国宝』などで見せた“別人級”の魅力

『すべての夜を思いだす』

2024年公開の映画『すべての夜を思いだす』で見上が演じる夏は、亡くなった友人が撮った写真の引き換え券を手に、多摩ニュータウンを歩く大学生だ。彼女の目的は、友人の母に会いに行くこと。けれど本作で描かれるのは、誰かの死を大きな悲劇として処理する物語ではないところが面白い。夏は街を歩きながら、友人が残した写真や、かつて一緒に過ごした夜の記憶に触れていく。
花火の夜を思い返すような時間も含めて、友人のことは、最初からはっきりした言葉として戻ってくるわけではない。街を歩いたり、人と話したりするうちに、「あの時、こんな時間を過ごしていた」と少しずつ記憶が戻ってくる。見上は、その心の動きをとても自然に演じており、素晴らしいの一言だ。泣き崩れるのではなく、感情を大きく説明するのでもなく、友人がもういないことを抱えたまま、静かに歩いている。その姿が、夏の寂しさと、記憶を受け止めようとする強さを物語っている。観終えたあとに、なぜだか夏の表情や街を歩く姿がいつまでも記憶に残るのは筆者だけだろうか。
『不死身ラヴァーズ』

2024年公開の映画『不死身ラヴァーズ』は、見上にとって映画単独初主演作となった作品ということで、ぜひとも観ておきたい作品だ。松居大悟監督が高木ユーナの同名コミックを実写化した本作で、見上が演じるのは、幼い頃に出会った甲野じゅんを運命の相手だと信じ、何度も恋をし続ける長谷部りの。両思いになるたびに相手が消えてしまうという不思議な設定の中で、見上は“好き”という感情にまっすぐ突き進む主人公を全力で演じている。
本作における見上は、とにかくエネルギッシュだ。思いを抑えるのではなく、走り、叫び、ぶつかっていく。『光る君へ』や『すべての夜を思いだす』で見せた静かな佇まいとは対照的に、甲野じゅんに向かって何度も「好きです!」と伝える場面も筆頭に感情が前へ前へとあふれ出していく。だが、その勢いは単なる明るさではない。好きな人を忘れたくない、消したくないという切実さがあるからこそ、りのの行動は観客の胸に残るのだ。見上の持つ透明感と、執着にも近い恋の熱量がぶつかり合うことで、彼女の新しい魅力が引き出された作品だ。
『国宝』

2025年公開の映画『国宝』で、見上は藤駒を演じている。吉沢亮、横浜流星、渡辺謙らが出演する本作は、歌舞伎の世界に身を投じる主人公の人生を描く大作。見上が演じる藤駒は、主人公・喜久雄が京都の花街で出会う芸妓であり、彼の才能を見抜く人物として物語に関わっていく。
『国宝』で見上が見せてくれているのは、現代劇とは異なる所作や佇まいの美しさだ。感情を直接的に言葉にするのではなく、視線の流し方、座り方、相手を見る間によって、人物の奥行きを伝える。華やかな世界に身を置きながら、決して画面の中で浮かない。むしろ、その場の空気に溶け込みながら、ふとした瞬間に強い印象を残す。『風、薫る』での和装や時代性のある佇まいにもつながる、見上の身体表現を確認できる作品としても、ぜひ見ておきたい。

『風、薫る』で見上に惹かれたなら、今回紹介した5作品にもそれぞれ違った発見があるはずだ。ひとつのイメージにとどまらず、作品ごとに表情を変えながら人物を生きる。そんな見上の魅力を、朝ドラとあわせて楽しみたい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK























