『時すでにおスシ!?』永作博美が体現した“母親のアジ” 早くも漂うロマンスの予感

『時すでにおスシ!?』が描く母親の“アジ”

 ゆえに今回の課題は有利に思えたが、大江戸は胡桃にだけ不合格を出すのだった。たしかに胡桃はいかに料理で自分の強みを見せるかばかりで、他の人たちのように食べる人のことや素材の活かし方を考えられていなかったように思う。ありていに言えば、少々押し付けがましい。自分の味を表現するとはどういうことか。大江戸が敢えて詳しく説明しなかったのは、その問いにじっくり向き合ってほしかったからだろう。しかし、生き急ぐ胡桃はすぐに“答え”を知りたがる。学長の横田(関根勤)もどちらかといえば、彼女寄りの考えだ。己の哲学みたいなものは鮨職人になってから各々が作っていくもので、あくまで学校は技術を教える場所。だが、どうにも大江戸はその考えに納得できない部分があるようだ。

 「飯炊き3年、握り8年」と言われるように、多くの人は一人前の鮨職人になるまでに長期の修行を要する。しかも、親方が手取り足取り技術を教えてくれるわけでもなく、その背中から自主的に学ぶ力が必要とされる職人の世界は、タイパ重視の現代人からしてみれば、理解し難い面も多いのかもしれない。だけど、無駄にも思える時間を積み重ねたからこそ、その先で何にも得難い達成感を味わえることもあり、大江戸はそのことを生徒たちにも教えたかった。その一方で、自分の考えは古いのかもしれないと伝統や慣習と新たな時代の価値観との間で葛藤する、実に人間味溢れる魅力的な人物を松山ケンイチが作り上げている。胡桃のクレームを受け、横田から厳重注意された大江戸がチョコをやけ食いする姿はシュールでいじらしく思わず笑ってしまった。

 そんな大江戸に寄り添うのが、みなとだ。「先生の話、まっすぐ私に届きました。感動しました。だから、自信を持ってください」と大江戸を励まし、胡桃たちにも鮨職人の経験から得た思いを伝えるようにアドバイスしたみなと。学校では、大江戸が教える立場だが、生きてきた長さでは彼女の方が少し上だ。加えてひとりの人間を立派な社会人になるまで育て上げてきた経験が、今まで一つのことを追求してきたがゆえに融通が利かないところもある大江戸に影響を与えることもあるのかもしれない。朗らかなみなとと堅物な大江戸は一見すると正反対だが、根っこの部分はどちらもまっすぐなため、理解し合えて、かつお互いの足りない部分を補い合える良いパートナーになれる気がする。みなとこそ覚えていないが、過去にも出会ったことがある2人の関係の進展にも期待したい。

■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
公式X(旧Twitter):@tokisushi_tbs
公式Instagram:tokisushi_tbs
公式TikTok:@tokisushi_tbs

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