『名探偵コナン』ファンが気づくセルフオマージュ 『ハイウェイの堕天使』にみる伝統

今年も劇場版『名探偵コナン』のシーズンになった。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)での4週連続過去作放送をはじめ、日常の至る場面でコナン、そして今年でいえば『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』(以下、『ハイウェイの堕天使』)メインキャラクターである萩原千速の姿を目にする。
幼稚園児の頃から『名探偵コナン』を追ってきた私としてはこの毎年のお祭りのような様相に、遠い場所に来たような感慨も覚える。当時の『名探偵コナン』はここまで毎年のようにムーブメントを起こすような作品ではなく、あくまでも子供向けアニメシリーズの域を出なかった。その潮流が変化したのは2014年の『異次元の狙撃手』、あるいは『純黒の悪夢』(2016年)あたりだろうか。それまではあくまでコナンと蘭、あるいは少年探偵団や怪盗キッド、服部平次といったレギュラーキャラに焦点を当てたストーリーを展開してきた劇場版シリーズだったが、『異次元の狙撃手』では沖矢昴(赤井秀一)を、そして『純黒の悪夢』では赤井秀一と安室透をメインキャラとして描くストーリーが描かれ、以降の劇場版シリーズでは人気キャラである赤井や安室を中心に様々なサブキャラに焦点を当て、各キャラを掘り下げるようなストーリーが軸となった。
サブキャラにフォーカスを当てる劇場版シリーズ

元々『名探偵コナン』はレギュラーキャラだけでなくサブキャラ、もっといえばシリーズの各エピソードにのみ登場するその話限りの登場人物も魅力のシリーズだ。アニメ『服部平次との3日間』で登場し、世良真純の原型となるキャラとなった越水七槻はその代表例だろう。そんな『コナン』シリーズの劇場版がサブキャラを掘り下げる構成に変化したのは必然ともいえ、遠い場所に来たような感慨すら覚える、と書いたものの、こうした本シリーズが元来持っていた魅力を活かした変化がそれまで以上にこの作品を国民的な存在に押し上げたともいえ、ひとりのファンとしてこの変化とヒットには肯定的な思いでいる。

振り返ると昨年公開の『隻眼の残像』はそれまで以上に挑戦的な作風であった。上述した通り、それまで劇場版でメインキャラを務めてきたのは赤井や安室、灰原にキッドといった『コナン』を劇場版しか追っていないライトファンでもある程度馴染み深いキャラたちであった。一方で『隻眼の残像』のメインキャラは大和敢助、上原由衣、諸伏高明ら長野県警組。加えて毛利小五郎の活躍も描かれたが、この座組も相まって結果としてそれまでとは随分テイストの異なるハードボイルド調の作風になった。とはいえ『隻眼の残像』公開以降、有志による長野県警組の二次創作などもSNSで数多く公開され、『隻眼の残像』は長野県警組というキャラたちの新しい魅力を作品を通して伝えることに成功。興行収入も147億円というシリーズ2位となる記録を達成。挑戦的な作風でありながらもこの記録を達成したことは今後の『コナン』シリーズにおける新しい方法論になり得ると感じていたが、先日公開された『ハイウェイの堕天使』はやはりその予想通り『隻眼の残像』を踏まえたさらに挑戦的な1本となった。ここからはある程度『ハイウェイの堕天使』のネタバレも交えながら本作を振り返りたい。




















