『冬のなんかさ、春のなんかね』“水色”が示す別れの予感 今泉力哉は“好き”の意味を問う

同化する山田の小説と文菜自身の感情

一方で、「私は彼じゃないから分からない」という理論において、本作には例外がある。山田と文菜の関係性だ。本作は、土田文菜という作家を主人公にした作品であるのにも関わらず、山田が書いた小説の一部のみが登場する。第1話では文菜とのやり取りを元にした山田の創作物を読んでいる文菜の声を通して、彼の書いた文章が呈示されるので、「あなたの口から発されたいくつもの“うん”は、いちばんウソのない音に感じた」という山田の感情は、その後「ウソじゃん、したじゃんキス。創作逃げだ」という言葉で彼をたじろがせる文菜自身の感情とも同化して聴こえる。
第7話における自動販売機を巡る彼の短編『その温度』もそうだ。原稿を読む編集者・多田美波(河井青葉)の声を通して視聴者は彼の小説を読む。「はっきりさせると必ず終わる。終わりが来たらきっと寂しい」「私は自分の呼吸が思ったより浅くなっていることに気づく」という作者である山田の主観を思わせる心情と共に重ねられるのは、公園のベンチで1人伸びをしながら佇み、思案する文菜の姿だ。

つまり、それは山田の現在の思いであるとともに、ゆきおや山田、小太郎(岡山天音)との曖昧な関係に悩む文菜自身の心情と同化する。だから、「山田さんには全部話している」と言う文菜にとって、山田に対する「好き」は、ゆきおに対する「好き」、すなわち「自分とは違う存在に対して“知りたい”と思う感情」とは少し違うのかもしれない。
山田の小説は「考え過ぎてしまう人の感情について書いてることが多い」と文菜が小太郎に話していた。それはどこか、このドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』そのものと重なる気がする。
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/
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