『ばけばけ』が訴える“中庸”の大切さ “日に日に世界が悪くなる”いま向き合うべき朝ドラに

トキ(髙石あかり)と結婚して、義父・司之介(岡部たかし)、義母・フミ(池脇千鶴)と同居を始めたヘブンは、日本のやり方、松野家のやり方を学び、懸命に順応しようとする。父に捨てられ、差別や迫害も経験しながら、世界各地を漂泊し、どこにも居場所を見つけられなかったヘブン。そんな彼がトキという最愛の伴侶を得て、初めて「家族」という名の居場所を見つけた喜びから、もう二度と手放したくないと、無理をしてしまう。さらには、無理がたたって嘘をつくことになってしまう。
何事も行きすぎれば、破綻が生じる。無理をしすぎたヘブンも、彼の気持ちを慮ることを忘れて問い詰めてしまったトキも、「中庸さ」が欠けていた。
トキはある部分で鈍感で、ヘブンはある部分で極端で短気だ。ふたりとも決して聖人君子でないところが、「不完全な人間どうしがトライアンドエラーを繰り返しながら関係性を育てていく」というドラマツルギーに説得力を持たせている。「足りない者どうし」がときにはぶつかりながら、その都度、胸の内を打ち明けあって、いたわりあって、だんだんと夫婦になっていく。だからこそ、観る者の心にコミュニケーションの難しさと大切さを訴えかけてくる。
さまざまな背景、さまざまな考え方をもつ多様な登場人物がいて、みんなそれぞれに「生きている」。これもまた『ばけばけ』の魅力だ。
第16週「カワ、ノ、ムコウ。」では、トキの親友で小学校の臨時教員をしているサワ(円井わん)と、長屋の隣の遊郭で働く遊女・なみ(さとうほなみ)の生き様がクローズアップされる。

トキとサワ、そしてなみ。加えて、松江随一の名家に生まれながら一時は物乞いをするまでに零落したトキの産みの母・タエ(北川景子)や、県知事の娘として何不自由なく育ちながら本当に欲しいものは手に入らないリヨ(北香那)など、『ばけばけ』に登場するさまざまな階層、さまざまな境遇の人物たちが、明治を生きた女性の苦悩を多面的に表現している。
第15週で、長屋や遊郭が連なる「橋南」から、城下の「橋北」に戻ったトキ。彼女を見送るサワの複雑な表情が忘れられない。このドラマは、幼なじみで親友のトキとサワの間に生じてしまう「格差」までも、容赦なく描く。この先サワとトキは、どんな行動に出るのだろうか。
かつてなみが、トキとサワに向けた「おなごが生きていくには、身を売るか男と一緒になるしかない」という言葉が、この後の展開でもキーワードになってきそうだ。はたして、なみとサワは、それぞれどんな道を選ぶのか。
「ドコ、モ、ジゴク。」という第6週の週タイトルがあった。これに象徴されるように『ばけばけ』は、背景や立場の違う者から見れば天国ーーつまり幸せに生きているように見えるかもしれないが、本人からすれば他者にはわかり得ない、その人なりの「地獄」を抱えて生きている、ということをずっと描き続けている。どこも地獄、誰もが苦しい。

物事や他者を色眼鏡で見ず、決めつけず、オープン・マインドな心構えで接してみる。自分とは違ういろんな人の気持ちや価値観を知り、想像して、二元論ではないところを探ってみる。そうすればきっと、「幸せな生き方」に近づくのかもしれない。おそらく『ばけばけ』はこの先もこうした、「知ること」と「中庸さ」を大事に描いていくことだろう。
蓮佛美沙子、夏目透羽、芋生悠、夙川アトム、橋本淳、『ばけばけ』熊本編新キャスト発表
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』の新キャストとして、蓮佛美沙子、夏目透羽、芋生悠、夙川アトム、橋本淳の出演が発表された。 朝…先日、この先に続くエピソード、「熊本編」の新キャストが公式から発表された。新たな人々との出会いを通じて、トキとヘブンは、どんな「幸せのかたち」を探していくのだろうか。
参照
※ https://www.steranet.jp/articles/95487
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















