『豊臣兄弟!』はなぜ豊臣秀長を主人公に据えたのか 一人の天才ではなく“チーム”の醍醐味

『豊臣兄弟!』はなぜ主人公を秀長に?

 「歌は世につれ、世は歌につれ」とはよく言ったもので、歴史上の偉人のイメージもまた、時代の世相や風潮を反映して変化し、それがまた世の中に影響を与えてゆくものであるようだ。

 2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』は、豊臣秀吉の弟・秀長を主人公に、無名の農民だった彼ら兄弟が、下剋上の戦国時代の中で、あれよあれよと出世を果たし、やがて天下統一という前人未踏の偉業を成し遂げるまでを描く物語であるという。

 大河ドラマに限ってみても、1965年の『太閤記』では緒形拳が、1981年の『おんな太閤記』では西田敏行が、そして1996年の『秀吉』では竹中直人が演じるなど、これまで幾度となく描かれ、それぞれの世代に強いイメージを残してきた「豊臣秀吉」の物語。それをなぜ、このタイミングでまたしても描くのだろうか。

 その狙いは、冒頭にも述べたように、秀吉像の刷新にあるのだろう。ある種の当たり役として、今もなお多くの人の頭の中でイメージされているであろう竹中直人の豊臣秀吉(竹中は2014年の大河ドラマ『軍師官兵衛』でも秀吉を演じている)。平成8年に登場したそれを「平成の秀吉」とするならば、ときは令和8年――そろそろ「令和の秀吉」が登場しても良い頃なのかもしれない。先頃、その竹中が松永久秀を、『秀吉』で秀長を演じた高嶋政伸が武田信玄を、本作では演じることが発表されたけれど、そこに刷新の明確な意思を読み取ることだって可能だろう。

 とはいえ、本作『豊臣兄弟!』の主人公は、あくまでも秀吉の弟――やがて豊臣秀長を名乗ることになる小一郎(仲野太賀)であり、彼の兄である秀吉――藤吉郎(池松壮亮)ではない。秀吉の補佐役として、あるいは奈良・大和郡山を拠点とした大納言秀長として、歴史的にその名が知られている人物ではあるものの、1985年に堺屋太一が小説『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』を発表するまでは、ほとんど主人公として描かれることのなかった人物だ。なぜその人物が、今回の大河ドラマの主人公なのか。そこに本作の、もうひとつの狙いがあるように思うのだ。

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