ドイツ人映画作家らが蒸発者や夜逃げ屋を追う ドキュメンタリー映画『蒸発』3月14日公開

ドイツ人映画作家らが日本の蒸発という現象に迫ったドキュメンタリー映画『蒸発』が、3月14日よりユーロスペースほかで全国順次公開されることが決定した。
日本では毎年、約8万人が失踪する。その多くは帰宅するが、数千人は完全に姿を消してしまう。その理由は、人間関係のトラブル、借金苦、ヤクザからの脅迫さまざま。彼らは「蒸発者」と呼ばれ、中にはいわゆる「夜逃げ屋」の支援を受ける者もいる。すべてのしがらみを捨て、どこか別の場所で、新しい生活を始める。深い喪失や挫折と、人生をゼロからやり直す希望が交差する。
本作は、知られざる「夜逃げ屋」の仕事や、失踪者と残された人々の心の葛藤と和解の道のりを、没入感のある映像で描くドキュメンタリー。ドイツ人映画作家のアンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家の森あらたが監督を務めた。なお、出演者たちの身元を保護する目的でAI技術を用い、一部の顔や音声を加工している。
コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭で連日超満員を記録し、ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞した本作は、40以上もの国際映画祭で注目を集め、ドイツ国内の50館以上のアートハウスで上映された。
ハートマン監督は、本作について「外国人である私の視点と、長年日本を離れて暮らしてきた共同監督・森あらた氏の視点が重なり合うことで、日本社会の中ではしばしば見えにくい『隠された世界』への扉が開かれました」と語り、「この作品が、社会的規範、家族や職業といった日本社会の構造について、判断や非難を加えることなく、注意深く、そして敬意をもって考えるきっかけとなることを願っています」と期待を寄せた。
また、森監督は「世界各地で上映されてきた本作が、ついに日本で配給されることを光栄に思います」と喜びを語った。
あわせて、予告編と場面写真も公開された。
コメント
アンドレアス・ハートマン(監督)

10年ほど前、日本滞在中に「蒸発」という現象、そして人生をやり直す手助けをする「夜逃げ屋」の存在を知りました。自らの意思で姿を消すという選択の裏にある、深い喪失感と可能性に強く惹かれました。
外国人である私の視点と、長年日本を離れて暮らしてきた共同監督・森あらた氏の視点が重なり合うことで、日本社会の中ではしばしば見えにくい「隠された世界」への扉が開かれました。本作は、日本特有の社会現象を記録するにとどまらず、人間の心理に迫る普遍的な試みでもあります。
私たちはあえてセンセーショナルな表現を避け、人々の声に静かに耳を傾ける姿勢で制作に臨みました。
この作品が、社会的規範、家族や職業といった日本社会の構造について、判断や非難を加えることなく、注意深く、そして敬意をもって考えるきっかけとなることを願っています。
森あらた(監督)

人生の半分を欧州で暮らしてきた私にとって、生まれ育った日本は半ば遠い国でした。しかし本作を通じ、この国の新たな側面、そして日本人としての自分自身を再発見することができました。
「蒸発」は広く知られながらも、日本社会の暗黙のタブーです。制作を通して驚かされたのは、この言葉にまつわる個人的な物語を、一見普通の人々が誰もが一つは抱えているという事実でした。
本作では、複雑で周縁的でありながら同時にどこにでも存在する、目に見えないブラックホールのような世界を描いています。そこで私たちが気づいたのは、蒸発者が新たな地で探しているのは、自由や安全だけでなく「自分自身」だということです。
世界各地で上映されてきた本作が、ついに日本で配給されることを光栄に思います。この記録が、皆さんの心に秘めた物語とどこかで重なることを願っています。
■公開情報
『蒸発』
3月14日(土)よりユーロスペース ほか全国順次公開
監督:アンドレアス・ハートマン、森あらた
撮影:アンドレアス・ハートマン
音楽:ヤナ・イルマート、竹原美歌
制作:Ossa Film
共同制作:Mori Film、バイエルン放送(BR)
プロデューサー:アンドレアス・ハートマン
共同プロデューサー:森あらた
配給:アギィ
助成:ドイツ連邦政府文化メディア庁(BKM)、Film- und Medienstiftung NRW
ドイツ・日本/2024年/カラー/DCP/86分
©2024 OSSA FILM, BR, MORI FILM
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