『WIND BREAKER』は新時代のヤンキー映画 山下幸輝×濱尾ノリタカの“物語”がいい!

それから本作のMVPは間違いなく十亀条を演じた濱尾ノリタカだ。兎耳山を見つめる十亀条の揺れる瞳がとにかく素晴らしい。彼の繊細な演技が映画『WIND BREAKER/ウィンドブレーカー』に奥行きを与え、より一層素晴らしいものにしているのは間違いない。本当によかった。素晴らしかった……。

また予告の段階では不安だったアクションも、飛びぬけて優れているわけではないものの時々アクロバットな蹴りが飛び出すなどとても見応えのあるものとなっている。特に兎耳山丁子役の山下幸輝の動きが相当すごく、「ダンサーにアクションをやらせるとすごい」というハイロー理論を見事に体現したアクションだ。
不良文化が消滅し、ヤンキーが侍くらいフィクショナルな存在になりつつあるこの時代に、まさにフィクショナルなヤンキーを突き詰めた『WIND BREAKER/ウィンドブレーカー』はポップで口当たりの軽いヤンキー映画という他にはないジャンルを確立させた傑作だ。これはなにより萩原健太郎監督の確固たるヴィジョンと、それを支えるスタッフの技術力の高さ、さらにはキャスト陣の確かな演技力によって実現したことは言うまでもない。ヤンキー映画に求める荒々しい熱量はやや足りないものの、新時代のヤンキー映画として気軽に観られるいい作品だ。

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレーカー』は2025年でベスト級の作品ではないのだけど、ある一定以上の面白さがある丁寧で良質なヤンキー映画が公開されるというのは、2025年の邦画の豊かさを象徴しているように思える。ヴィジュアルや予告編で舐められそうな作品だが、職人技の冴えわたる良作として、個人的には観て損はないと思う。少なくとも、十亀条の存在はひとりでも多くの人に知ってほしい。それほど、あの揺れる瞳は魅力的だった。
■公開情報
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
全国公開中
出演:水上恒司、木戸大聖、八木莉可子、綱啓永、JUNON(BE:FIRST)、中沢元紀、曽田陵介、萩原護、髙橋里恩、山下幸輝、濱尾ノリタカ、上杉柊平
原作:にいさとる『WIND BREAKER』(講談社「マガジンポケット」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:政池洋佑
プロデューサー:加茂義隆
音楽:Yaffle、桜木力丸
主題歌:BE:FIRST「Stay Strong」(B-ME)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©にいさとる/講談社 ©2025「WIND BREAKER」製作委員会
公式サイト:wb-movie.jp
公式X(旧Twitter):@winbre_movie





















