『ばけばけ』ヘブンの元妻・マーサを演じた役者は? 朝ドラ史上最長の英語シーン秘話

髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
第11週では、リヨ(北香那)の告白をきっかけに、これまで明かされなかったヘブン(トミー・バストウ)の過去が、回想シーンを用いて丁寧に描かれた。
制作統括の橋爪國臣は「トキ(髙石あかり)とヘブンという波長の合う2人が“たまたま地球の裏側で出会った”という物語を作る上で、彼の過去もどこかで描く必要があった」とし、「なぜシンシナティ時代を選んだのか」について、こう続ける。

「彼の生い立ちを説明するのは相当大変で、ヘブンのモデルの小泉八雲さんには、生まれの話があったり、アイルランド時代の宗教の話があったり、いろいろな要素が積み重なっている。それらをすべて描くのは難しいので、ヘブンのパーソナリティがしっかり見える場所を抽出したいと思っていました。もともと定住を求めなかった彼ですが、実はトキの前にも一度結婚していて、やはりうまくいかなかった。その事実こそ、この物語で彼のパーソナリティを描く核になると考えたんです」
回想シーンはすべて英語で描かれており、「朝ドラとは思えないほどの英語量なので、朝の忙しい時間帯に観るのはなかなか大変かもしれませんが、今は見方も多様化していますから」と橋爪。「なにより吹き替えにすると、トミーのお芝居が台無しになると思ったので、思い切って字幕でいくことにしました」と振り返る。
シンシナティ時代のセットはNHK大阪放送局に組まれたもので、「この週は小島東洋という若手の演出家が初登板していて、ここでしか使わないセットなので、彼がデザイナーと話をして好き放題作りました(笑)」と説明。アパートの隣に食堂がある設定で、「当時(1880年前後)はアメリカでプロ野球チームができ始めた頃なんです。シンシナティには『シンシナティ・レッズ』がありますが、当時は『シンシナティ・レッドストッキングス』。きっとそれっぽいものがどこかに潜んでいるはずですし、野球をする少年がいたりもします」と裏話を語った。

ヘブンの元妻・マーサ役を演じるのは、オーディションで抜擢されたミーシャ・ブルックス。橋爪は「日本には黒人女性でお芝居をされている方はあまり多くありません。アメリカの俳優さんで日本でお芝居がしたいという方がいると紹介をいただき、日本で行ったオーディションに参加してもらいました」と選考までの経緯を明かす。
さらに、「圧倒的にお芝居が素晴らしかった」と評価し、「日本が大好きで留学経験もあって、トミー以上に日本語がペラペラなんですよ。ハーバード大学を卒業後、MIT(マサチューセッツ工科大学)でも学んだ、とんでもない才女で。理解力も高く、お芝居の基礎もきちんと身についている、ものすごい芝居力のある役者さんでした」と話した。
ブルックスはシンシナティ(オハイオ州)に隣接する州の出身で、橋爪は「言葉なども含めて、田舎町っぽい雰囲気を出してくれたと思います」と、リアリティにも手応えを示す。

「トミーは日本語のお芝居を続けてきて疲れもあったと思いますし、ミーシャとずっと2人で喋っていましたね。きっとその空気感みたいなものが、映像にも出ていたと思います。トミーがふだん、日本語で演じてくれているのもすごいことですが、英語で芝居している彼を見るのはやっぱり楽しいなと。トミーの本当の力がより見えるシーンになったと思います」
壮絶な過去を経て、自身を「トオリスガリ」だと言い切るヘブンがいかにして松江にとどまることになるのか。トキとの日々がもたらす、彼の心の変化にも注目したい。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK




















