『ちょっとだけエスパー』最高潮展開のセミファイナル “ぶんちゃん”の愛ゆえの暴走と犠牲

『ちょっとだけエスパー』愛ゆえの暴走と犠牲

 ドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)第8話「ぶんちゃん」は、四季(宮﨑あおい)の記憶を辿る旅路の物語。その相手は、文太(大泉洋)であり、文人(岡田将生)という2人の“ぶんちゃん”だった。やがて、四季は自身が死ぬ記憶を思い出し、驚愕の行動に出る。それが、Eカプセルの乱用。Eカプセルは、エスパーの能力を手に入れられる代わりに、副作用から死が近づく。Eカプセルを飲むというより、バリボリと噛み砕く四季に呼応するように、ノナマーレにあるディシジョンツリーは巨大に膨れ上がり、まるで暴走していた。

 最終回を前に、最高潮の展開を見せている『ちょっとだけエスパー』。予告の中で「ぶんちゃんとぶんちゃん、2人とも殺します」と宣言している四季は自暴自棄になっているようにも捉えられるが、ヒーロードラマであればEカプセルを大量摂取すれば一時的に強力な力を手に入れられると考えるのが普通だろう。四季の能力は、息で吹き飛ばす能力だが、それがもし街を吹き飛ばすほどの能力に変貌したとしたら。文太の「いっちょ救いますか」というセリフは、愛する四季を救う――世界を救う、Bit5にとって最後のミッションだとしたら。

 少々、想像が飛躍してしまったが……第8話は四季が文太とともに記憶を上書きしに、鎌倉を訪れる物語。しかし、上書きするどころか、どこに行っても四季の脳裏には文人との思い出が溢れてきてしまう。文人にとっての「世界を救う」とは、「四季の世界を救う」ということ。そのためならば大罪である過去を改竄したとしても、未知の能力に魅了されるエスパーを死なせても、1000万人を見殺しにしたとしても、文人にとっては四季が生きてさえくれればそれでよかった。

 四季は交通事故に遭い、下半身を潰され亡くなってしまう。2035年までの10年間の未来の記憶をインストールするナノレセプターには、あるトリガーが仕込まれていた。まるで天使が肩に手を置くようにそっちじゃないよとささやいてくれる、忌まわしい出来事から四季を守るトリガー。文人が過去を改竄するしかないように、文太も四季にナノレセプターを飲ませるというミッションを果たすしかなかった。それは、四季を愛しているから。

 生きる理由を失った文太はビルから身を投げようとした時に、ビルを突き破り巨大に成長するディシジョンツリーを目の当たりにする。最終回に向けて、改めて整理しておきたいのはノナマーレに忍び込んだ久条(向里祐香)の存在。ホロリンクコミュニケーターを通じて2055年からデータを送っている文人はある種、無敵の存在だが、そこに対抗できるのは久条しかいないだろう。Eカプセルによる副作用から最も死期が近い桜介(ディーン・フジオカ)は、実の息子である紫苑(新原泰佑)と和解し、父であることを告げられるのか。円寂(高畑淳子)は因縁の男・結城(吉田鋼太郎)への復讐心を再び燃やしていた。

 結城と同じ第5話に登場して以来、ぱったり話題にすら挙がってきてもいない白い男(麿赤兒)の正体も気になるところ。最終回となる第9話は、刹那も見逃せない、永久(とこしえ)に語り草となる伝説の回になりそうだ。

『ちょっとだけエスパー』の画像

ちょっとだけエスパー

野木亜紀子が脚本を手掛けるSFラブロマンス。会社をクビになり、人生詰んだサラリーマンが“ちょっとだけエスパー”になって世界を救う。

■放送情報
『ちょっとだけエスパー』
テレビ朝日系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:大泉洋、宮﨑あおい、ディーン・フジオカ、宇野祥平、北村匠海、高畑淳子、岡田将生
脚本:野木亜紀子
監督:村尾嘉昭、山内大典
エグゼクティブプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、山形亮介(テレビ朝日)、和田昂士(角川大映スタジオ)
音楽:髙見優、信澤宣明
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/chottodake_esper/
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