『ちょっとだけエスパー』野木亜紀子インタビュー 初タッグの貴島彩理PとSFに挑んだ理由

野木亜紀子が語る『ちょっとだけエスパー』

 ドラマ化で脚色を手がけた『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)やオリジナルの『アンナチュラル』(TBS系)など、数々のヒット作を生み出してきた脚本家・野木亜紀子がテレビ朝日の連続ドラマで初めて脚本を手がけた『ちょっとだけエスパー』で、SF作品に初挑戦。彼女はなぜいま、このジャンルに挑んだのか。初タッグとなる貴島彩理プロデューサーとの出会いや登場人物の当て書きなど、脚本の裏側について話を聞いた。

貴島彩理プロデューサーとだから挑めた“SFラブロマンス”

ーー『ちょっとだけエスパー』は非常に独創的な物語で、日本のテレビドラマではあまり観たことがないタイプの作品だと感じました。1話から全く先が読めない展開でしたが、脚本はどのように書き上げていったんですか?

野木亜紀子(以下、野木):最初の企画段階で、全体のプロットはある程度書いていて、最終回だけまだない状態だったんですよね。割と最後のほうまで決めていたので、そこに向けて書いていきました。今回は取材の必要がほとんどなかったので、その点に関しては圧倒的に楽でしたね。

ーーかなり話が入り組んだ脚本なので、いろいろと試行錯誤されたのかと思っていました。

野木:わかりやすく伝えるための試行錯誤はしました。あと、全9話のドラマを書くのが今回初めてだったんです。なので、うっかりいつもの10話ペースで書いていたら、途中で入り切らないことに気づいて……(笑)。

ーーなるほど(笑)。

野木:実は最初、3話の終わりで四季(宮﨑あおい)の能力を発現させようとしたんですが、もう少し平和な話が観たいということで、4話に繰り下げたりして。そうしているうちに今の構成になったのですが、なんとなくそのペースで6話の初稿まで書いたんですよ。それでいざ7話を考えていたら、「あれ、この先もう2話しかないな? まずい」と、7話でやろうとしていたことを6話に前倒して、まるっと構成し直しました。

ーーSFジャンルは以前からやりたいとおっしゃっていましたよね。

野木:そうなんです。だから、今回がやれるチャンスだなと思ったんですよね。貴島(彩理)さんって、テレ朝の中では異色のプロデューサーじゃないですか。“テレ朝っぽい”ドラマが多い中で、彼女だけちょっとおかしなドラマをつくることが許されているというか(笑)。

ーーはい(笑)。

野木:今回、貴島さんと一緒にドラマを作ろうとなったとき、私は“魔法使いもの”と言って、貴島さんは“忍者もの”がいいと言って、最終的に“エスパーもの”になったんですけど、実は“魔法使いもの”はTBSにもお伺いを立てたことがあって。でも「ありえないだろ」というムードで。

ーーそうだったんですね。

野木:なので、私からしたら“渡りに船”だったというか。貴島さんとだったら、突飛な企画ができそうだなと。

ーー企画のはじまりは2021年ごろだと伺いました。相当時間はかかっていますよね。

野木:貴島さんとの出会いは2016年で、彼女がまだ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の単発版の方でプロデューサーデビューする前でした。緊張した声で「いつか私がプロデュースするドラマの脚本を書いてください!」という電話がいきなりかかってきて(笑)。「じゃあ一度食事でもしましょうか」となって、その頃から年に1、2回「ドラマを語る会」みたいなことをずっとやっていたんです。それで2021年に「そろそろ書いてくれませんか」と言われて、「そうだね、だいぶ時間が経ったね」ということで企画がスタートした、という流れです。

ーーなるほど、そういう関係性があったんですね。

野木:とはいえ「構想4年」とかいう大袈裟な話ではないんです。先ほどお話ししたように、大体のストーリーは2021年から2022年の間にできていたので。ただ、お互いのスケジュールもありますし、大泉洋さんが空いているタイミングが、たまたま2025年だっただけで。

ーー最初から大泉洋さんありきで、文太も当て書きなんですよね?

野木:そうです。最初から大泉さん主演の企画として考えました。ほかのキャストの方々もみんな当て書きです。「エスパーが出てくるSFラブロマンス」という突飛な企画なのに、みなさん企画書だけで引き受けてくださったので、本当にありがたい限りで。脚本を書き出す前にはメインの7人は全員決まっていましたね。

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