『べらぼう』脚本・森下佳子は“写楽”をどう解釈したのか “愚道者”横浜流星への感謝も

『べらぼう』森下佳子は“写楽”をどう解釈?

横浜流星は“愚道者”

 ――主人公・蔦屋重三郎を演じた横浜流星さんの印象について聞かせてください。これまでのクールなイメージとは異なる、陽気な江戸っ子を見事に演じられていました。

森下:私の横浜さんの印象を一言で言うなら「捨て身」でした。自分をむき出しにして、ごろんと差し出すような。それは最初から最後まで変わりませんでした。普段はそれほどおしゃべりな方ではないと思うのですが、膨大なセリフ量をこなし、陽気な蔦重という役を生き抜くのは、彼自身に相当な負担をかけたと思います。

――脚本執筆において、横浜さんのイメージに寄せて書くことはありましたか?

森下:いえ、あえてご本人に寄せるようなことはしませんでした。横浜さんは外側から真似るのではなく、内側から役を作っていく“求道者”のような方なので、こちらが合わせるのは失礼だろうと。時々、「蔦重はどうして日本橋に行こうと思ったんでしょうか。俺だったら行かない気もするんです」といった鋭い質問が来ることがあって、そういうときは一緒に考えたり、脚本上の整合性を整えたりしました。映像を観て、「そんなに変な顔しなくてもいいのに」とか「源内さんの真似までしなくていいよ」と思うくらい(笑)、全身全霊で演じてくれましたね。期待以上でした。

――最後に、この作品を通して伝えたかったテーマを教えてください。

森下: 蔦重は、本や浮世絵を通じて、江戸から地方へ、そして後世へと“文化”を広めた人です。それは言い換えれば、“笑い”を届けた人だったのかなと思います。今の世の中、笑うことが不謹慎だと言われたり、笑うこと自体がしんどかったりする場面が増えている気がします。そんな時代だからこそ、財産を没収されようが、仲間が死のうが、最後までふざけきって生きた蔦重たちの姿は「あっぱれ」だなと思うんです。それは一つの尊い生き方であり、困難な時代における人間の強さだと感じています。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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