【今夜放送】『ズートピア』続編の前に押さえたい注目ポイント 現代社会の矛盾を寓話に

『ズートピア』続編の前に押さえたいポイント

 もちろん『ズートピア』の魅力として、現代的なテーマに踏み込んでいる点も触れないわけにはいかないだろう。同作の舞台となる街・ズートピアは現代社会の縮図となっており、今を生きる人々にこそ刺さる物語となっている。

 たとえばズートピアは「誰でも何にでもなれる」というスローガンを掲げた社会だが、実際には動物たちのあいだで偏見や固定観念が残っており、理想と現実のギャップが色々な形で噴出していく。ジュディが直面し、打ち破ろうとする「大型の動物しか警察官になれない」という慣例は、まさにその最たるものだ。

 しかしその一方、ジュディ自身は清廉潔白かというと、そういうわけでもない。無自覚のうちにほかの動物への偏見を抱いており、ニックとの関係において大きなトラブルを招くことになる。

 ほかにもメディアが恐怖心を煽った結果、特定の集団への偏見が広まったり、立場のある人物が「治安のため」と称して分断を利用しようとしたりと、リアリティを感じさせる社会の描写がいくつも登場する。

 誰もが幸せになれる世界を理想として掲げながら、現実にはそれとはかけ離れた実態が横行している……という意味で、こうした設定はある意味現代社会が孕んだ矛盾を的確に写し取っていると言えるだろう。

 そのうえでジュディとニックはどうしようもない現実を受け入れるのではなく、「自分たちのできる範囲から変えていこう」と行動する側に立つ。完璧なハッピーエンドではなく、問題が一気に解決するわけでもないが、「世界は矛盾だらけでも、嘘や偏見にはNOと突き付ける」というメッセージが物語の根っこにある。

 前作が公開された2016年より、現在の社会情勢はさらに混沌とした状況に陥っている。そこで『ズートピア2』は一体どのような答えを示そうとするのだろうか。ふたたび世界中の観客に勇気を与えてくれることを、大いに期待したい。

参照
※ https://www.disney.co.jp/corporate/news/2025/20251028_02

◼️放送情報
『ズートピア』
日本テレビ系にて、12月5日(金)21:00〜23:09放送
※放送枠15分拡大 ※本編ノーカット
声の出演:上戸彩 (ジニファー・グッドウィン)、森川智之 (ジェイソン・ベイトマン)、三宅健太 (イドリス・エルバ)、竹内順子 (ジェニー・スレイト)、高橋茂雄(ネイト・トレンス)、玄田哲章 (J・K・シモンズ)、Dream Ami (シャキーラ)、村治学 (レイモンド・S・パーシ)、芋洗坂係長
監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
共同監督:ジャレド・ブッシュ
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
脚本:ジャレド・ブッシュ、フィル・ジョンストン
音楽:マイケル・ジアッチーノ
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