『国宝』にも出演の下川恭平は“記憶”に残る俳優 『ばけばけ』小谷役で飛躍の時へ

下川恭平は“記憶”に残る俳優に

 器用に何でもこなしてしまう下川は、「できない」演技も実に上手い。『ばけばけ』第40話では、こっそりスキップを練習していた錦織(吉沢亮)の姿を、ヘブン、正木、丈と共に目撃するシーンがあった。下川はお互いの動きをチラ見しつつも、仲間たちと楽しそうにスキップをする姿を披露している。できることを「できない」ように見せるのは難しい。できる人が「できない動き」を演じると、どうしても不自然さが残ってしまうからだ。

 華麗なステップを難なくこなせる下川にとって、「スキップができない」という表現はむしろ難題だったはずだ。だがドラマで小谷が見せる初々しいスキップには、「初めてできたことへの喜び」が溢れていた。

 声の良さ・体幹の良さは、舞台『鬼滅の刃 其ノ参 無限夢列車』の煉獄千寿郎を演じた際にも存分に発揮されていた。「煉獄さん」といえば、弁当を高速で口にかきこみながら、バッキバキの目で「うまいっ! うまいっ!」と威勢よく声を上げるシーンが有名だが、下川もまた、歌舞伎役者のような張りのいい声で観客を魅了した。殺陣シーンもアクロバティックな動きが得意なだけに、刀裁きも華麗だ。

 下川は、さり気ない瞬間の演技も巧みである。11月27日放送の『ばけばけ』第44回では、ヘブンが授業中にリヨとのランデブーの約束を自ら暴露してしまう。なんとしてもリヨとの関係を阻止したい錦織は、授業中に「あっ」とひらめいたことを大声で口にする。その様子に眉をひそめ、きょろきょろと目を右往左往させる小谷の姿は、画面の左端に数秒残るのみ。ただ、その一瞬があることで、錦織の慌てぶりが一層際立つのだ。

 第10週からは、小谷がトキに恋をするという展開が描かれる。公式Xで11月22日に公開された「1分新スポット」(第9週以降の本編映像まとめ)では、はにかみながら「覚えていますか……。よかった」と声をかける小谷の姿が映し出された。その言葉に、トキは「好きなの? どこに惚れたかね」と応じる。白い歯をのぞかせ、照れくさそうに笑う小谷は、これまで見せたことのない表情だ。

 ところが、第10週の予告「トオリ、スガリ」では、小谷とサワがお互いに照れを交えつつ、仲睦まじく語り合う姿が映されている。公式サイトの「第10週あらすじ」によれば、サワ(円井わん)や家族がいち早く小谷の想いに気づき、彼の恋を応援するという。果たして、今後どのような展開が訪れるのか。

 小谷の想いはトキに届くのか。その時、ヘブンはどんな動きを見せるのか。それとも、サワと共に新しい幸せを選ぶのか。小谷の揺れる心の行方に、今後も目が離せない。

参照
※1. https://gaga.ne.jp/FutatsunoSekai/about.html
※2. https://www.instagram.com/reel/Cuep4u7BzqO/?igsh=MWIwcHg4NGdiYzV6eA%3D%3D

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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