『終幕のロンド』草彅剛×中村ゆりの大人の恋の行方 善悪を備えた人間らしさは要潤の真骨頂

『終幕のロンド』草彅剛と中村ゆりの恋の行方

 11月17日放送の『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系)第6話では、巨大企業に新たな疑惑が沸き起こった。

 こはる(風吹ジュン)の思い出の文箱を手に伊豆を訪れた樹(草彅剛)と真琴(中村ゆり)だったが、帰れなくなって一夜をともに過ごすことになった。熱を出して寝込む真琴に夫の利人(要潤)から着電があり、樹が代わって出ることに。不審げな利人に樹は状況を説明する。

 翌朝、熱が下がった真琴は、樹をともなって文箱の工房へ足を延ばす。職人の竹澤(飯田基祐)から、こはると真琴の父である俊介(加治将樹)の暮らしぶりを聞いた樹たちは、二人が住んでいた家へ向かう。そこで目にしたものは……。

 別れた父と母の足跡を訪ねる真琴には、単なるルーツ探しにとどまらない切実さが感じられる。生前整理を依頼したのはこはるだが、親族の真琴の思いに寄り添う樹は、亡き妻に対してできなかったことを代わりにしているようにも見える。

 樹と真琴の距離が接近するにつれて、観ているこちらにも若干の戸惑いが生じる。既婚女性が夫以外の男性と同じ部屋で泊まることは、不貞行為にあたりうる。真琴に夫を裏切る気がなくても、はたから見たら立派な不倫と言えてしまうからだ。

 けれども、今作はその疑念を掘り下げることはしない。樹は、電話口で利人に真意を釈明する。その口調はいつも通り淡々としたものだ。勤務先「Heaven’s Messenger」の社員も樹を疑ったりはしない。仕事中でも亡き妻のマリッジリングをしている樹の人柄を知っているからだ。道ならぬ恋はほのかに香る程度だ。

 そのことは副次的な効果を生み、俊介とこはるの同居生活に澄んだ光を当てる。妻子ある俊介との関係は略奪愛のいわゆる駆け落ちで、その事実は真琴の心にも影を落としている。こはるが口をつぐんでいるのは、後ろめたさがあったからかもしれない。

 真琴と樹が目にした絵。俊介が亡くなる直前まで描き続けた絵は、そこにあるものとして存在感を放っていた。絵の題材は若かった頃のこはるで、こはると俊介の真実を映していた。それが不倫なのか、正しいことかどうかとは別の次元で否定できないものがあった。

 こはるにとって、一緒に暮らした家を訪ねるのは40年ぶり。今はもういない相手の心の中に自分がいたこと。それを知って愛しさで心が満たされたに違いない。真空パッケージされた時間がよみがえるひとときだっただろう。

 『終幕のロンド』の主人公は樹だが、陰の主人公は“記憶”である。遺品に込められた思い出や過去の記憶が、今を生きる人々に何を伝えるかが隠されたテーマだ。そこには向き合いたくない過去だったり、残酷な真実もある。

 豊春(中村雅俊)にとって、文哉(米田惠亮)の記憶は「10年経った今でも傷口は癒されない」もので、花壇の手入れを頼んだ碧(小澤竜心)に面影を見てしまう。美佐江(大島蓉子)も碧に服を与えるのは、息子への思いがあるからだろう。一方で、こうした親代わりの愛情を碧自身がどう受け止めるかまで、考えが及んでいないように見える。

 第6話では、草彅剛と要潤のマッチアップが見られた。何度も共演してきた両者が対峙するシーンは、ドラマ好きとしてうれしい。要が演じる利人は、嫉妬心や猜疑心を隠さないキャラクターだが、会社のために正論を吐くまっとうさもある。矛盾をはらんだ利人の善人でも悪人でもない人間らしさは、要潤の真骨頂である。

 遺品を通じて死を多角的に見つめる本作で、利人が専務を務める御厨ホールディングスの不祥事は、社会的なマクロの視点から故人の尊厳に光を当てるものだ。真実を救うことは残された人々を救うことになるか、物語の行く末を見つめたい。

『終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー』の画像

終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー

『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』の高橋美幸が脚本を手がけたヒューマンドラマ。遺品整理人である主人公が、遺品整理会社の仲間たちとともに、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添っていく。

■放送情報
『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュン
脚本:高橋美幸
演出:宝来忠昭、洞功二
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸、三方祐人、阿部優香子
音楽:菅野祐悟
主題歌:千葉雄喜 「幸せってなに?」 (Warner Music Japan)
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/shumaku-rondo/
公式X(旧Twitter):@shumaku_rondo
公式Instagram:@shumaku_rondo

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