『ちょっとだけエスパー』も話題 『おおかみこどもの雨と雪』で知る宮﨑あおいの“声”の魅力

そんな宮﨑といえば、朝ドラ『らんまん』(2023年度前期/NHK総合)でナレーションを担当していたのが記憶に新しい。ひだまりのような優しい彼女の声が、好きなことに向かって一直線な主人公の物語を、温かく包んでいた。毎朝が楽しみだったものである。
しかし先述しているように、民放の場で日常的に宮﨑が私たちの前に姿を見せるのは、2012年に放送された『ゴーイング マイ ホーム』(カンテレ・フジテレビ系)以来のこと。『純情きらり』(2006年度前期/NHK総合)と『篤姫』(2008年/NHK総合)という、「朝ドラ」でも「大河ドラマ」でも主演を務めた経験のある宮﨑は、間違いなく“国民的俳優”だといえる存在だ。が、その豊かなキャリアにおいて彼女は、ドラマよりも映画に多く出演してきた俳優なのである。

そのうちのひとつが、『おおかみこどもの雨と雪』。『時をかける少女』(2006年)や『サマーウォーズ』(2009年)、そして最新作『果てしなきスカーレット』が公開されようとしている細田守監督による長編アニメーションだ。
本作が描くのは、かなり変わった親子の物語。ある日、“おおかみおとこ”と出会った主人公・花は、彼と恋に落ち、結婚をし、やがてふたりの子どもである雨と雪が生まれる。そうして、人間と狼のルーツを持つ子どもたちの成長と、その母である花の絆をダイナミックに描き出していく。花の声を演じるのが、宮﨑である。

本稿では彼女の“声”について言及してきたが、肉体をともなう映画やドラマ、あるいは物語の状況や登場人物の心情を説明するナレーションと声優業は、まったく違う。声だけで、喜びや苦悩といった、キャラクターの内面の変化を表現しなくてはならない。甘く、柔らかく、温かで優しいのが宮﨑の声の大きな魅力だが、自由自在に操ってみせるところにこそ、その真価はある。いまから10年以上も前の作品ではあるが、彼女が優れた声の使い手であることは、アニメのほうがよく分かる。
現在は公開中の映画『秒速5センチメートル』にも出演中だが、お茶の間で俳優・宮﨑あおいに出会える機会は、そう多くはない。『ちょっとだけエスパー』で彼女の魅力にはじめて触れた若い世代も多いらしいから、今回の『おおかみこどもの雨と雪』の放送は、また大きな驚きを人々にもたらすかもしれない。
■放送情報
『おおかみこどもの雨と雪』
日本テレビ系にて、11月7日(金)21:00〜23:24放送
※放送枠30分拡大、本編ノーカット
声の出演:宮﨑あおい、大沢たかお、黒木華、大野百花、西井幸人、加部亜門、林原めぐみ、中村正、大木民夫、片岡富枝、平岡拓真、染谷将太、谷村美月、麻生久美子、菅原文太
監督・脚本・原作:細田守
脚本:奥寺佐渡子
キャラクターデザイン:貞本義行
作画監督:山下高明
美術:大野広司
CGディレクター:堀部亮
色彩設計:三笠修
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