『終幕のロンド』御厨家の束縛を離れた真琴 草彅剛と六平直政の再共演に胸を打たれる

『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系)第4話が11月3日に放送された。
樹(草彅剛)の目の前で倒れたこはる(風吹ジュン)は病院に搬送された。こはるは真琴(中村ゆり)に病気について黙っていたことを詫びるが、真琴はこはるが決めることだと言って理解を示した。真琴の夫である御厨利人(要潤)と利人の母の富美子(小柳ルミ子)は、こはるの入院費を自分たちが出すと言い、こはるに治療を勧めるが、それは次期社長就任を控える利人と御厨グループのためでもあった。
その頃、Heaven’s Messengerでは、海斗(塩野瑛久)たちが、亡くなった稲葉大輔(川合諒)の父・博貴(六平直政)とあやうくトラブルになりかける。お笑い芸人を目指していた息子の不慮の死に、博貴は感情を抑えることができなかった。社長の磯部(中村雅俊)は、遺族は怒りを吐き出す必要があると言って、樹に助力を求めた。
『終幕のロンド』では、遺品整理の仕事を通じて接する故人と遺族のエピソードを取り上げてきた。第1話から第3話までは、亡くなった父や母に対して、残された子どもの立場から死と向き合った。第4話では、息子に先立たれた父親の思いを克明に描いた。
親から子へ、子から親へ。双方の思いは死という断絶によって行き違ったまま固定され、そこには葛藤が残される。より正確に言うと、残された遺族はわだかまりや心残りを胸に抱えて、その後の人生を生きていくことになる。死の受容は、生前は本人にとって、亡くなった後は遺族にとって切実な問題となる。
博貴にとって、大輔の死は二重の意味で引きずるものだった。親の反対を押しきってお笑いの道を選んだこと、中途で挫折し、何ひとつ報われずに人生を終えたこと。愛情深い父親だった博貴には、なおさら堪えるものだったはずだ。
樹が博貴に寄り添う姿は、自分一人では整理できない感情を、そばにいることでどうにかして見つめる手助けをするものに見えた。そこに樹自身の意思は介在せず、ほどよい距離感で丁寧に接することが、傷ついている遺族にまず必要になることが伝わってきた。
その上で樹がしたことは、生前の故人の思いを知ることで遺族の人生を一歩進めるものだったといえる。亡くなる直前まで、大輔は寸暇を惜しんで笑いのネタを考え続けていた。教員だった博貴が伝えた宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を胸にバイトやネタ作りに励んでいた。父の思いは決して無駄にならなかったし、最後まで生き続けていたのだ。
本作を観て、遺品整理を美化しすぎていると批判することは可能だろう。実際の特殊清掃を含む遺品整理の仕事は、従事するスタッフにとって負担の大きいシビアな現場であると推察される。それでも、遺品を通して知ることができる故人の生きざまが残された遺族の生きる支えになることは軽視できない。
六平直政と草彅剛は、過去にも『嘘の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)、『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)の“戦争”シリーズや『新幹線大爆破』(Netflix)でたびたび共演しており、役者としてリスペクトし合う関係。2人の対峙は、真正面から互いの思いがあふれる真摯で誠実なものだった。
真琴は樹と接する中でこはるに対する向き合い方が変化し、母の思いを尊重するようになった。それによって変わったのは御厨家との関係だ。利人や彩芽(月城かなと)に逆らえず、また静音(国仲涼子)に裏切られていた真琴が、自らの意思で生きるようになったのは、小さく見えて大きな変化だ。そのことは少なくない波紋を呼ぶと思われるが、死と向き合うことで、生きている人間の生き方が根底から変わる可能性を示唆している。
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』の高橋美幸が脚本を手がけたヒューマンドラマ。遺品整理人である主人公が、遺品整理会社の仲間たちとともに、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添っていく。
■放送情報
『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュン
脚本:高橋美幸
演出:宝来忠昭、洞功二
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸、三方祐人、阿部優香子
音楽:菅野祐悟
主題歌:千葉雄喜 「幸せってなに?」 (Warner Music Japan)
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/shumaku-rondo/
公式X(旧Twitter):@shumaku_rondo
公式Instagram:@shumaku_rondo





























