『じゃあ、あんたが作ってみろよ』勝男と竹内涼真が完全一致? 真に迫る役作りを考察

 11月4日に第5話が放送される『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)は、俳優・竹内涼真を更新する作品だ。

 初回放送を観てのけぞった。気楽な気持ちで観ていた筆者は、ドラマが進むにつれて画面から目が離せなくなってしまった。そこにいたのが、あまりにも竹内涼真だったからだ。画面の中で竹内が話したり、笑ったり、落ち込んだりしながらキッチンに立っている。既視感を通り越して、もはや完全一致に近い。念のためSNSの反応を確認したら、多くのファンが似たような感想をポストしていた。

 今作で竹内が演じるのは20代の会社員、海老原勝男だ。勝男は令和の“化石男”である。亭主関白思考の勝男は「料理は女が作るもの」という考えを持ち、同棲中の山岸鮎美(夏帆)が作った料理をことこまかにジャッジする。完璧主義で化学調味料を否定し、コンビニ弁当や冷凍食品を見下している。前時代的な男女の役割分担が勝男の中で残っていて、鮎美へのモラハラがひどい。しかも勝男はそのことに無自覚で、鮎美に別れを切り出されるまで気づかない。勝男にも良いところはあるが、それは男が女を守るとか、弱みを見せるのは恥などのステレオタイプな男らしさだ。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』©TBSスパークル/TBS

 この勝男を竹内は絶妙なさじ加減で演じている。有害な男性性を内面化した勝男は、そのまま演じると平板で記号的なキャラになるのをギリギリのところで回避している。竹内自身、勝男について「ほぼ自分」と役とのリンクを認め、特別な役作りはしていないと語っている。だが、その言葉をそのまま受け取るわけにはいかない。竹内自身、ストイックに演技を探究し、随所にこだわりの強さを発揮するところは『あんたが』の勝男に通じる。しかし、それは本当に竹内本人なのだろうか?

 竹内涼真の代表作といえば主演作の『テセウスの船』(TBS系)や『六本木クラス』(テレビ朝日系)、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系/Hulu)シリーズを挙げる人が多いだろう。熱量の多い芝居で誰もが感情移入できる骨太なキャラクターを演じるパブリックイメージは“竹内らしさ”として認知されている。

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 一方で、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の麦野や『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)の黒木のように、主人公と並走しながら物語の鍵を握るキャラクターも演じてきた。最近では『ペルソナの密告 3つの顔をもつ容疑者』(テレビ東京系)の複数の人格を持つ容疑者や『看守の流儀』(テレビ朝日系)の刑務官役で新境地を開いた。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』©TBSスパークル/TBS

 こうして見ると、思っている以上に竹内の役柄は多彩でバリエーションに富んでいる。俳優なので当たり前かもしれないが、私たちが勝手にこういう人だと決めつけているだけ。いわゆるタイプキャストというやつである。その上で『あんたが』の竹内はどうかと聞かれたら、やはりそれは過去最高に竹内涼真としか言いようがない。

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