『新東京水上警察』『火喰鳥を、喰う』『愚か者の身分』 作品における山下美月の“頼もしさ”

この秋は山下美月が頼もしい

 この秋は山下美月の存在が頼もしい。ヒロインを務めた映画『火喰鳥を、喰う』が10月に入ってすぐに封切られると、これに続くかたちでドラマ『新東京水上警察』(フジテレビ系)がスタート。さらには主要キャストのひとりとして参加した映画『愚か者の身分』も公開されたところだ。乃木坂46を卒業してから1年が経ち、本格的に演技者としての道を邁進中。ここではドラマシーンでの活躍を軸に、彼女の“頼もしさ”について記してみたい。

 放送中の『新東京水上警察』は、タイトルから推測できるとおり、「水上警察」の活躍を描く作品だ。水上での犯罪を取り締まるため、「東京水上警察署(水上署)」が発足。ここに、水恐怖症のリーダー・碇拓真(佐藤隆太)を中心とし、捜査一課から配属となった日下部峻(加藤シゲアキ)や元鑑識の藤沢充(中尾明慶)といった、経歴も価値観も異なる者たちが集められた。そのうちのひとりが、山下が演じる海技職員の有馬礼子である。

『新東京水上警察』©︎吉川英梨/講談社 ©︎フジテレビ

 海技職員とは、海や川の安全を守る警察の専門職員だ。天候や潮の流れを読みながら操船を行う水上のプロフェッショナルで、「水上署」に欠かせぬ存在。彼女がいなければ、このチームは動くことができないわけだ。もっといえば、有馬のような存在がなければ、『新東京水上警察』は成立しない。そんな重要な役どころを山下が担っているのである。

 山下が「心配になるくらい、熱くてまっすぐな人間」と語っているように、有馬はかなりマジメな性格のキャラクターだ。芯があり、そしてそれは熱くたぎっている。ふだんは穏やかだが、「水上署」の一員として海を駆けているときの彼女は、顔つきが違う。まるで別人だ。有馬としての内面の変化が、演じる山下の表情に表れているのだろう。発する声にも力がこもっていて、そこには鋭さがある。これもまた彼女の内面の表れなのだろう。

『新東京水上警察』©︎吉川英梨/講談社 ©︎フジテレビ

 このオンとオフの大きなギャップが、有馬の持ち味だ。彼女の内面が切り替わることによって、本作のテイストも変化する。事件となれば「水上署」の誰もが表情を変え、現場へ急ごうとするわけだが、海技職員である有馬がいなければ水上へと出動することはできない。やはり、本作において“山下美月=有馬礼子”は非常に重要な存在なのである。まさに作品の柱。こうしたポジションを担うことができるところに、いまの山下の頼もしさがある。製作陣からの信頼度の高さが、ここに表れているだろう。

『火喰鳥を、喰う』©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

 いっぽう、『火喰鳥を、喰う』では怪異に見舞われる久喜夕里子を、『愚か者の身分』では闇ビジネスによって裏社会とのつながりを持つ希沙良を、それぞれ演じている。怪異に見舞われたことのある人や、裏社会とのつながりを持つ人というのは、そう多くはないだろう。海技職員として水上の治安維持に奔走している人とというのも、かなりかぎられるはず。つまり、有馬礼子も、久喜夕里子も、希沙良も、いずれも私たちにとってあまり馴染みのない存在なのだ。

 しかし山下が演じると、どことなく親しみやすさを覚えるから不思議なものである。やはりアイドル時代の印象が影響しているのだろうか。“親しみやすさ”でいえば、乃木坂46在籍中に出演した朝ドラ『舞いあがれ!』(2022年後期/NHK総合)での山下の役どころは完璧だった。演じていたのは、ヒロインの幼馴染みにして生涯の友である久留美というキャラクター。つねにヒロインに寄り添い、私たちの朝のお茶の間に温もりを提供する存在だった。山下にとって初の「朝ドラ」だったこともあり、この久留美とは、俳優としての彼女のキャリアにおいて特別なものだろう。

『新東京水上警察』©︎吉川英梨/講談社 ©︎フジテレビ

 では、『新東京水上警察』の有馬礼子は、山下のキャリアにどう位置付けられる存在になっていくのだろうか。先述したとおり、彼女はこの作品の柱。重責を負っているわけだが、ドラマの展開にあわせて、俳優・山下美月が大きく変化していくところに立ち会うことができるかもしれない。

『新東京水上警察』の画像

火9ドラマ『新東京水上警察』

日本の連ドラ史上初の「水上警察」を題材にし、東京の海や川を警備艇で駆け巡り事件を追う“マリン×クライムエンターテインメント”。

■放送情報
火9ドラマ『新東京水上警察』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:佐藤隆太、加藤シゲアキ、山下美月、中尾明慶、齋藤璃佑、山口紗弥加、皆川猿時、椎名桔平ほか
原作:吉川英梨『新東京水上警察』シリーズ(講談社文庫)
脚本:我人祥太
主題歌:Aqua Timez「if you come」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:得田真裕
演出:西岡和宏、柳沢凌介、土方政人、朝比奈陽子
プロデュース:大野公紀
制作プロデュース:山崎淳子
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
『新東京水上警察』©︎吉川英梨/講談社 ©︎フジテレビ
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