『ばけばけ』髙石あかりの感情豊かな表情に感服 “牛乳ひげ”の切ない反復

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第20話にて、トキ(髙石あかり)と司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)の4人での暮らしが再び始まった。婿もいない、借金しかないうらめしく、だけど明るい。トキは銀二郎(寛一郎)と夫婦2人で暮らす東京での生活ではなく、松江で帰りを待つ松野家を選んだのだ。

その選択をする動機となるのが、牛乳で作った白ひげだ。トキに西洋の素晴らしさを知ってもらおうと、根岸(北野秀気)が作ったパン中心のブレックファースト。牛乳で乾杯し、牛乳ひげに笑い合う光景に、松野家での思い出が重なり、トキは突然涙する。だんだんと笑い声が遠ざかり、あの日の風鈴の音が聞こえてくる――。
寂しげなトキの後ろ姿、ぽろぽろと涙をこぼすトキに銀二郎が声をかける。筆者はこのシーンに驚いたのは、怪談を「古くさい」と却下されたときとは違う髙石あかりの涙の芝居もそうだが、いっさいその意味を補足するインサートが挟まれないこと。分かりやすさを優先すれば松野家の井戸端で笑い合った過去の場面を間に入れそうなものだが、それがないのは視聴者を信頼しているからこそであると感じた。もちろん、後にトキが東京から松江に帰った際に、松野家の面々が牛乳ひげを作って待っているという、保険は打たれているのだが。

境内に2人きりのトキと銀二郎。トキの本心は銀二郎と夫婦2人で東京でやり直したい。怪談落語「牡丹灯籠」を一緒に聴きに行くランデブーの約束も果たしていない。けれど、松野家の家族を放っておくことはできない。トキにとっては、変わらず大切な本当の親なのだ。涙が溢れる顔で微笑むトキ。銀二郎も涙を堪えながら、微かに笑みを見せる。同日放送の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」には銀二郎を演じた寛一郎が登場。VTRにて髙石あかりはこのシーンについて、「私たちは一緒になることは今はないと分かる瞬間があって、そのときにお互いちょっと笑い合う」と銀二郎であり、寛一郎と芝居で繋がった場面だったと振り返っている。それに寛一郎も「幸せになってほしいという思いからの笑顔」だったと明かしていた。誠実さと人を思う優しさに満ちた寛一郎に当て書きをしたかのような銀二郎。視聴者をも味方につけ、愛されるキャラクターとなった銀二郎に、誰もが幸せになってほしいと願っている。
第5週からは、トキの運命を変えるレフカダ・ヘブン(トミー・ バストウ)が本格登場。予告ではすでに荒ぶる勘右衛門の姿が確認できるが、その間に入るのが錦織(吉沢亮)。外国人教師としてやってきたヘブンの通訳を知事から任され、公私ともにサポートすることとなる。第20話には「日本は過去を振り返っとる場合ではない。これからを、そして海の向こう、西洋を見ていかなくちゃならん」という錦織のセリフがあったが、ギリシャ生まれのアイルランド人と運命の出会いを果たすとはトキは微塵も思っていなかっただろう。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















