『ばけばけ』堤真一が表情だけで物語る“父”としての愛 あったかもしれない日常が切ない

トキ(髙石あかり)が、体調を崩した傳(堤真一)の看病を申し出たNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第13話。トキだけが知らない松野家と雨清水家の秘密がチラつく回となった。
親戚のおじ様を思ったトキの申し出を、司之介(岡部たかし)も勘右衛門(小日向文世)も拒否することはできない。それはフミ(池脇千鶴)も同じだが、フミの表情には少し憂いがあるように見える。

トキが傳の看病に来たはじめての朝、タエ(北川景子)は、トキが作ったであろうしじみ汁を一口飲み、切なげな表情を浮かべる。養母であるフミ直伝のしじみ汁だ。トキがもし雨清水家で育っていたら、しじみ汁を作ってフミに振る舞うなんてことはなかったかもしれない。
床に伏せる傳の額に、濡らした手拭いを乗せ、笑顔で看病をするトキ。束の間の親子のやりとりだ。タエも傳も朝からトキが自宅にいる光景に、一緒に住んでいたらあったかもしれない日常を見ているような気がした。
そんな傳の思いを知らないトキは、幼い頃から「おじ様が父上だったらよかったのに」と言っていたと、松野家では定番の冗談を口にする。そのエピソードを聞いた傳は、少しも動揺を見せず笑顔で応じていた。トキを戸惑わせないために何も言わない、微塵も態度に出さないというのが、雨清水夫婦の鉄則なのかもしれない。
看病は夜まで続き、トキは傳の枕元で怪談を聞かせる。夜になり、織物工場の財政状況や自身の健康を踏まえて弱気になる傳であったが、トキと過ごせる時間に感謝をしている様子。

朝と夜に傳が見せた柔らかな表情には、トキへの複雑な思いが伺える。トキの前では態度に出さないようにしていても、漏れ出てしまう実の父としてのトキへの愛情、実の娘としてかわいがれないことへの諦めなど、堤真一が見せる表情にはさまざまな感情が見え隠れしていた。
堤は司之介や勘右衛門と共にいるときには、コメディ力の高い振る舞いやセリフまわしが際立っているが、トキと二人きりになったときには切ない親子関係が匂い立つ芝居を見せている。とくに、トキから手を握られたときの動揺とその後見せた笑顔には、雨清水夫婦がトキに対して持っているであろう切ない愛情が見てとれた。
そんなトキと傳の時間を心配して、そわそわしている松野家の面々。松野家にとって、傳やタエがトキに何か言うのではないか、トキが戻ってこなくなるのではないかということが、一番の心配事なのだろう。トキを大事に思う一方で、養子に来たことで貧乏長屋で暮らすようになったのを、引け目として感じる部分もあるのかもしれない。

そして、トキには絶対に話すことができない秘密を銀二郎(寛一郎)が知ってしまった。トキだけが知らぬ秘密がある以上、トキがいつ秘密を知り、どのような影響を受けるのかが、第3週の鍵になるだろう。トキや松野家が悲しい思いをしない展開になればいいが……。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















