『ばけばけ』と『ベイビーわるきゅーれ』に共通する“軽さと重み” 美しいけど切ない花嫁姿

髙石あかりが本格的に登場。いきなりお見合い、いきなり祝言。展開が早いのは朝ドラあるある。それにしても、朝ドラことNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第2週「ムコ、モラウ、ムズカシ。」(演出:村橋直樹)は展開がおそろしく早かった。
トキ(髙石あかり)の結婚相手は、小泉八雲をモデルにしたヘブン(トミー・バストウ)ではなく、最初の夫となる銀二郎(寛一郎)である。これも朝ドラあるあるで、主人公は生涯の伴侶に出会う前に初恋をしたり、初婚の相手がいたりする。人生とはそういうもので、最初の出会いが一生の相手ということはなかなかない。
気になるヘブンとは「二人が出会うまで1875日」と第1週に続いてテロップでアナウンスされた。出会う日は着々と近づいている。その頃、ヘブンはニューオーリンズの新聞社の文芸部で働いていた。企画会議で日本に行く企画が上がり、同僚のイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)から「ふたりで行きませんか」と誘われる。いよいよ日本へ? でも女性連れ?

日本ではトキが別の男性(銀二郎)と結婚し、ニューオーリンズではヘブンとイライザがなんとなくいい雰囲気に感じる。いまはまだそれぞれ別の人生を歩んでいるトキとヘブンがどんなふうに出会うのか興味は尽きない。
聡明そうなイライザを演じているシャーロット・ケイト・フォックスは『マッサン』(2014年度後期)でウイスキー作りに励む夫を支えた妻エリーを演じた。ひとり外国から日本に来て、異国の文化、生活習慣に慣れないなかで、明るさを決して失わず、夫マッサン(玉山鉄二)を支えたエリー。朝ドラファンにとても愛された。あれから11年、外国人と日本人の結婚物語が再び作られるのは感慨深い。
ちなみにヘブンのモデル・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンもニューオーリンズに10年くらい暮らしてから日本に向かった。ニューオーリンズの夏は高温多湿だそう。漁港のある街だが、ミシシッピ川が湖に流れ込む場所で、そこに異国人や貧しい人たちが混ざって暮らしていた。トキのモデル・小泉セツが暮らした町は川と湖があり、川を挟んで富裕層と貧困層が分断されている。小泉八雲が何を見ながら何に興味を抱き、どう生きてきたか、彼の住んだ町から想像を巡らすと、様々な想像が膨らんでいく。
いやでも、ヘブンのことはまだ先の楽しみとして、銀二郎だ。2回目のお見合いで松野家に婿入りを決めた銀二郎。莫大な借金をしてとても貧しい、それこそ、城下町の反対側――橋の向こうで暮らしているような家に、よく婿入りを決意したものである。彼の家の目的や彼の心情が気になる。
銀二郎のキャラ作りの参考にしたらしい前田為二という人物は、旧鳥取藩の士族・前田家の次男。
雨清水家の三男坊・三之丞(板垣李光人)が三男で跡取りではないために父・傅(堤真一)に期待されず、家に居づらそうなのと同じで、銀二郎も次男で跡取りではないため、あまりいい境遇ではなかったのかもしれない。

女性が家のために嫁に行かないとならない辛さもあるが、男性も跡継ぎ以外は尊重されないという、悲しい立場であったのだ。なにかと女性蔑視が注目されるが、性別というよりは、いつの時代も、光と影のように、強い存在の影に弱い存在が生まれ、弱い立場になった人は不遇になるという状況を注視したい。
目下、トキは武士の時代の終焉と借金による貧困という圧倒的に弱者の位置に立たされている。でも、持ち前の明るさと家族愛と怪談で、なんとか乗り越えようとしている。
明るさーーユーモアは令和的なノリで描かれる。ふじきみつ彦特有の「無類の親戚好き」や「あの話」の繰り返しなどはテンポがよく、ドラマを生き生きとさせるし、わちゃわちゃ感が家族ならではの“阿吽の呼吸”を感じさせる(これは俳優たちの力でもある)。狭くて貧しいながらも楽しい我が家という感じだ。
また、橋に作られた人柱(源助柱)を見ながらトキが友人・サワ(円井わん)と交わす会話は、内容は悲しい話だが、それを極力悲しく話さないようにしているように見える。悲しみに浸りすぎるとずぶずぶと深いところに沈んでしまうから、それを避けているのか、あるいは、悲しみに慣れすぎて麻痺しているのだろうか。





















