キム・ウビン×スジ9年ぶり共演の王道ラブコメ 『魔法のランプにお願い』なぜ賛否両論に?

『魔法のランプにお願い』なぜ賛否両論に?

 魔法のランプから精霊ジーニーがあらわれて、3つの願いを叶えてくれるならーー。

 多くの人が夢想する”ミラクルストーリー”である『アラビアン・ナイト』(千夜一夜物語)。その中でも最も有名な、『アラジンと魔法のランプ』をモチーフにした韓国ドラマ『魔法のランプにお願い』が、 10月3日にNetflixで全13話が一挙配信された。

 主演を務めるのは、9年ぶりの共演が話題のキム・ウビンとスジ。脚本は『シークレット・ガーデン』『太陽の末裔 Love Under The Sun』『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』などの大ヒット作を世に送り出し続ける、韓国が誇るヒットメーカーであるキム・ウンスクが手がけ、演出は『恋愛体質』『タッカンジョン』『エクストリーム・ジョブ』などのイ・ビョンホン監督と、『秘密の森 ~深い闇の向こうに~』『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』のアン・ギルホ監督が担当。韓国ドラマ界のヒットメーカーが集結することで、配信前から注目が集まっていた。(以下、ネタバレを含みます)

 物語は、キム・ウビン演じる、火から作られた精霊であるジーニーの語りで始まる。「ジーニー」というのは名前でなく精霊たちの呼び名で、願いを叶える精霊たちの総称らしい(ちなみに女性の場合は、ジンニーヤと呼ぶ)。

 ジーニーといえば、ディズニー・アニメーション『アラジン』の青い魔神か、実写版でジーニーを演じたウィル・スミスが脳裏に浮かぶ人も多いだろう。青い色をして、ちょんまげのようなユニークな髪型をし、コミカルで頼りになるおちゃめなジーニー。しかし、本作でキム・ウビンが演じるジーニーは、アラビア語で「魔王」や「悪魔」を表すイブリースという名を持ち、なんとも優雅で煌びやかで麗しい姿をしている。キラキラとしたアラビア衣装を身にまとい、乾いた茶色の砂がどこまでも続く砂漠に吹く風にたなびく長髪姿が、ため息が出るほど美しい。イブリースが姿を消すときは、黄金の砂金のようにも見えるキラキラと光る砂が舞い、風とともに気品が漂う。しかし、彼は恐ろしい力を持ち、一瞬で人間を殺めることができるのだ。

 冒頭、イブリースによる、ジーニーの種族たちが数名を残して滅んだ理由の説明がなされる。魔力を持つジーニーたちはその力に傲り、神を超えようとしてその怒りに触れてしまう。神は天使たちにジーニーたちを滅ぼすように命じて、ノ・サンヒョン演じる死の天使イジラエルをリーダーとして戦争が繰り広げられる場面が、アニメで描かれる。さらに、ジーニーたちが滅んだ後に、その代わりとして土から人間が作られたと説明は続く。

 本作は、韓国の大型連休であるチュソク(秋夕)に合わせて一挙配信された。連休期間は10月3日から10月9日の7日間であるのだが、配信直後から日本では早い段階で離脱する視聴者が出始めた。その理由として、イブリースの説明についていけないという声があったり、話が入り組んでいて分かりづらいと感じた視聴者もいたようだ。

 視聴者たちの評価が分かれた理由のひとつは、アラビア世界であるドバイと、現在の韓国と、過去の韓国にあった高麗時代の話が混じることで、時間の経過が混乱を呼んだことだ。登場人物たちも多く、そのキャラクターたちの前世を含めた過去と現在とが行ったり来たりし、場所と時間とキャラクターが変わることに負担を感じたようなのだ。さらに、物語の難易度を上げていると推察され、この部分を最大の離脱の原因に挙げている人が多いのが、物語のベースにある西洋的宗教観だ。

 本作の物語は、旧約聖書の『創世記』や、ダンテの『神曲』、ミルトンの『失楽園』の西洋の宗教的・文学的宇宙観がベースにあり、それぞれの世界観においての、「神」「天使」「悪魔」「人間」「土(大地)」が頻繁に出てくるのだ。そのため、西洋的宗教観である、神が7日間でこの世界を創造した「創造論」に頭の中がクエスチョンになってしまったようなのだ。猿から進化して人間になった「進化論」と、神がすべてのものを創造したとされる「創造論」の違いを、ガヨンも口にする。創造論の中では、神は光を最初に作り、天と地を作り、自然を作り、時間を作り、命を作り、人間を作り、休息する。土から人間を作ったのが6日目とされるが、それが物語の中では金曜日にあてられている。その前日の木曜日にジーニーを作り、水曜日には天使を作ったという台詞を、イブリースやイジラエルがたびたび口にするのだが、この名前も分かりづらいという声があった。一方で、本作を評価した視聴者の中には、この部分が面白いと感じた人も多かったようだ。筆者は、冒頭のイブリースのアニメーションを交えた説明に、ドラマの世界でここまで表現できるようになったことに感激し、これは素晴らしい作品だと魅了された。

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