『ばけばけ』髙石あかりに誰もが魅了される! 型破りなユーモアが生む新しい朝ドラ

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第1週「ブシムスメ、ウラメシ。」第5話にて、トキを演じる髙石あかりが本格登場した。幼少期のトキを演じていた福地美晴とは第4話でバトンタッチということになる。
10年ほどが過ぎた、明治19年(1886年)。18歳になったトキは、傳(堤真一)が営む織物工場で働き、借金を返す日々を送っていた。松野家は武家の町から引っ越し、今は橋を渡った川のほとりにある遊郭街と隣り合わせの長屋に住んでいる。

なんの娯楽もなく、いいこともない。そんな日々でも、トキは新しい怪談と幽霊の夢、金縛りに遭ったことを“よかったこと”と思える、同じ織物工場で働くチヨ(倉沢杏菜)、せん(安達木乃)と比べると少し変わった女性であるところは幼い頃からそのままだ。自分は自分であり、娯楽がないというチヨたちの話にも共感する。互いを認め合えるトキの人柄を示しながら、傳がおやつ休息に差し入れするカステラが生きていてよかったことになる、タイトルバックが始まるまでの短いアバンで示す見事な構成だ。

第5話で印象深く描かれているのが、トキとフミ(池脇千鶴)、司之介(岡部たかし)、勘右衛門(小日向文世)の家族としての結び付きとひたむきさ。仕事を終え、疲労困憊のトキと司之介が仲良く玄関に崩れ落ち、どちらが疲れているかの比べ合いっこをする。傳がトキに持たせてくれたカステラにフミが言う「生きててよかった」のセリフや、カステラをお墓に見立てて手を合わせ司之介を思う――それがたとえ、貧しさとうらめしさの中にある“空元気”だとしても、前向きな親子の絆は変わっていない。
しかし、相変わらずなのは膨大な借金の額。借金取りの森山(岩谷健司)に「このままじゃ返済に200年かかるがね」と言われ、「すみません……なんとか100年以内には」と返す泰然自若としながらもどこか抜けているフミのやり取りに思わずクスッとしてしまうが、どん底はどん底。遊女のなみ(さとうほなみ)の捨てゼリフ「おなごが生きていくには身を売るか、男と一緒になるしかないんだけんね!」、森山が提案する遊郭行きに対して、トキは婿をもらうことを考えた。働き手を増やして借金を返すしか道はないのだ。

縁結びで有名な八重垣神社で試した、トキの恋占い。紙の舟は小銭を乗せたまま池の水面を遠ざかっていく。日が傾きかけてもまだ浮いている舟からは「ご縁は遅い」という結果とあわせて、「遠方の人とご縁がある」ということも表している。それは未来の夫となる
レフカダ・ヘブン(トミー・ バストウ)を指しているのだろう。ちなみに、第4話の時点で「2人が出会うまで5612日」=約15年と表示されていたことから計算すると、ここから約5年後にトキとヘブンは運命の人として出会うこととなる。

傳にもらったカステラに満面の笑みを浮かべ、全く沈まぬ恋占いの舟に絶望の表情を見せる。まるでトキと一体化したかのような、髙石あかりの自然な芝居に魅了されながら、第1週を観て感じるのは上質で、丹念な作品作り。朝ドラでありながら、朝ドラの型を忘れさせる、おかしみを描いた丁寧な脚本、リアリティを追求した演出、徹底した役作り。一時の話題性よりも、上質なエンターテイメントを時代が求めていることは、後に本作の重要なキーマンとして登場する吉沢亮が主演を務める映画『国宝』が証明している。『ばけばけ』もまた、半年をかけてゆっくりと浸透していくのではないかと、そんな予感が今からしている。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















