『ばけばけ』語りになぜ阿佐ヶ谷姉妹を抜擢? “史実”だった恋占いの裏側も

『ばけばけ』阿佐ヶ谷姉妹を抜擢した理由

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 主人公・トキ(髙石あかり)の親戚で、武家の娘としての教養を厳しく教える雨清水タエに扮するのは、朝ドラ初出演の北川景子。その夫であり、松江で知らぬ人はいない人格者・傳を堤真一が演じている。

 制作統括の橋爪國臣は、「雨清水家は松江の中でも随一の名家、トップで居続けた家の象徴として描きたいと思っていました。ですから、それに見合った説得力のある人たちでなければ、“浮世離れした雰囲気”は表現できないなと。そう考えたときに、タエ役には北川さんしか思い浮かびませんでしたし、そんな妻を温かく見守って、全部を包み込んでくれるような夫となると堤さんしかいなかった。そこでおふたりにお声掛けしたところ、快く受けていただけました」と振り返る。

 演出の村橋直樹は、NHK大河ドラマ『どうする家康』でも北川とタッグを組んでおり、芯の強さと内面の揺らぎを両立する表現力を高く評価。本作でも「もう一度、あの芝居を撮りたい」との思いがあったという。

「『ばけばけ』では、“変わりゆく時代の中で揺らいでいた人たち”を描きたいと思っています。その中で、堤さんも北川さんも、“人からは揺らがない強さを持っているように見えるけれど、実は揺らいでる”という表現にとても長けたおふたりだと感じていて。芝居の上手さはもちろんですが、おふたりが纏っている雰囲気も含めて、役に活かしていただいています」(村橋)

 撮影は穏やかに進み、「堤さんも北川さんも、『私たちがいるときだけ、大河ドラマみたいだね』と(笑)。朝ドラらしくないシーンをずっと撮り続けています」と村橋。さらに、「おふたりとも台本を読んで『コメディ色が強い』と感じて現場にいらしたと思いますが、ふじきさんの本はコメディだと思って笑わせようとする演技をすると面白さが消えてしまう不思議な台本なんです。北川さんは、岡部(たかし)さんをはじめ周りのみなさんの芝居を見て、『意外と真面目にやるんですね』とすぐに掴んでいましたね。私も『真面目だから面白いんです』と、ずっと言い続けたのを覚えています」と裏話を語った。

 朝ドラにはナレーションや語りがつきものだが、本作でそれに近い役割を担うのが蛇と蛙。ドラマに姿を見せない回でも、オープニングクレジットにはあえて「語り」ではなく、「蛇」「蛙」と表記されている。

 その理由について、橋爪は「15分しかない朝ドラにはナレーション的な立場が必要ですが、客観的に引いた目線ではなく、かといって登場人物が一人称で語るということでもない。物語の中の登場人物として、見守ってくれる存在にしたかった」と説明。さらに、そのキャラクターが蛇と蛙であることが大きな意味を持つという。

「小泉八雲さんとセツさんの家のお庭には、蛇と蛙が住んでいました。(小泉八雲が)残した文章とかを調べると池にいる蛙を蛇が食べようとしているのを見た八雲さんが、自分のステーキを蛇の前に置いて、蛙が逃げられるようにした、というお話があります。それから八雲さんの自画像は、実は蛙だったりもするんですよね。そういった蛇と蛙が、近くで2人を見守ってくれたらうれしいなと思っています」(橋爪)

 蛇と蛙を用いるアイデアを発案し、その声に阿佐ヶ谷姉妹を選んだのは脚本のふじきみつ彦。橋爪は「ふじきさんと阿佐ヶ谷姉妹さんは若い頃からいろいろとご一緒されていて、ふじきさんの本を理解されているんです。阿佐ヶ谷姉妹のおふたりが楽しく応援してくれることでドラマがより面白くなるし、視聴者にも寄り添ってくれる。蛇と蛙の配役については、ふだんの漫才の立ち位置のまま、自然と演じてもらっています」と話した。

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