日本人が共有してきた“金曜の映画体験” 『金曜ロードショー』40周年を機に功績を辿る

日本人が共有してきた“金曜の映画体験”

 吹き替え声優の活躍を一般に浸透させたのも、『金ロー』の功績だ。古くは、『レオン』ジャン・レノ役の大塚明夫や、『アルマゲドン』ブルース・ウィリス役の磯部勉、『ターミネーター2』アーノルド・シュワルツェネッガー役の玄田哲章。最近では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』マイケル・J・フォックス役の宮野真守。山寺宏一が、かつて演じていたマイケル・J・フォックスからクリストファー・ロイドにスイッチしたことでも、話題になった。

 ざっくりいうと、80〜90年代は野沢那智、大塚明夫など「吹き替えスターの黄金時代」、2000年代は森川智之や平田広明など「専属声優定着時代」、2010年代以降は宮野真守や沢城みゆきなど「人気アニメ声優の時代」といえるだろう。『金ロー』を追いかけていけば、その時代のトレンドが見えてくる。

 また近年、『金曜ロードショー』はSNSとの相性の良さでも注目されている。「#金ロー」が放送日に必ずトレンド入りし、視聴者が一斉に感想を投稿し合う。かつてリビングで家族と分かち合った体験が、いまやSNS上で拡張されているのだ。

『天空の城ラピュタ』©1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

 『天空の城ラピュタ』で「バルス!」が叫ばれるとXはバルス祭りで埋め尽くされ、『千と千尋の神隠し』のカオナシ大暴走ではタイムラインが騒然となり、『名探偵コナン』では「#灰原」「#安室透」などキャラ名がトレンドを席巻する。そして『鬼滅の刃 無限列車編』がオンエアされた際には、「#鬼滅の刃」「#煉獄さん」が瞬く間にトレンド上位を独占したことも記憶に新しい。

 動画配信の普及で、映画は“好きなときに一人で観る”ものになった。しかし金ローは、かつてリビングで家族そろってテレビを観たのと同じように、“同じ時間に、みんなで観る”という体験を守り続けている。この逆説的な新鮮さこそ、40年続く理由のひとつだろう。

 そして今回の40周年特番は、映画そのものを放送するのではなく、「シーン」という切り口で名場面を振り返る点がユニークだ。確かに映画は全体の物語が感動をもたらすが、ときに数十秒のシーンが記憶に刻み込まれることがある。

 『ジュラシック・パーク』でティラノサウルスが咆哮するシーン、『君の名は。』で瀧と三葉が黄昏時にすれ違う場面、『アナと雪の女王』でエルサが「Let It Go」を歌いながら氷の城を築き上げるシーン。こうした“忘れられない瞬間”が、世代を超えて共通言語になっている。

 「視聴者投票」で選ばれた名シーンは、いわば国民的映画アーカイブ。懐かしさに浸るだけでなく、出演ゲストが現代的な視点でコメントを加えることで、新たな意味が浮かび上がるに違いない。

 『金曜ロードショー』が40周年を迎えるということは、日本の映画文化がテレビを通じて育まれてきた歴史を証明することでもある。配信全盛時代のいまこそ、同じ時間に同じ映画を観る体験の価値が再確認されるべきだろう。

 40年の歴史を背負いながら、次の10年に向けて。『金曜ロードショー』はこれからも、国民にとって映画の入口であり続けるはずだ。

参照
※ https://top10.co.jp/sport_entertainment/4301?utm_source=chatgpt.com

■放送情報
『国民が選んだ忘れられない名シーン』
日本テレビ系『金曜ロードショー』にて、10月3日(金)21:00~22:54放送

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