『眠れる森の美女』を観た後は楽しみも倍増? 『マレフィセント』が特別な一作である理由

善と悪のはざまで揺れるマレフィセント

『マレフィセント』の最も重要なポイントは、やはりそのストーリーにある。前述のとおり、本作は『眠れる森の美女』のマレフィセントのオリジンストーリーではなく、全く違う世界の彼女を描くアナザーストーリーだ。マレフィセントというキャラクターを使った二次創作と言ってもいいほどの違いがそこにはある。
『眠れる森の美女』では“この世の悪”を一身に背負っていたマレフィセントだが、本作で描かれるのは、彼女にも善の心があったということだ。彼女がなぜオーロラに呪いをかけるに至ったのか、それまでの経緯も痛ましく胸を締め付ける。しかしその後、オーロラの成長を見守る彼女からは、ヴィランのイメージとは違う印象を受けるだろう。『マレフィセント』で注目したいのは、彼女がオーロラにかけた呪いがアニメーション版と違う点だ。それは彼女の過去、とくにオーロラの父であるステファン王(シャールト・コプリー)との因縁に深く起因している。彼女を絶望の淵に突き落としたもの、それをオーロラにも与え、同じ苦しみを味わわせようと考えたのだろう。一方でそこに一縷の望みをかけたようにも思われ、彼女の心情を思うと切ないものがある。
善と悪とははっきりと切り分けられるものではない。ましてや一個人が“善のみ”あるいは“悪のみ”の存在であることも、現実世界ではありえないだろう。しかしディズニーヴィランズに代表される悪役たちは、純粋に“悪のみ”の存在として描かれてきた。そこに「マレフィセントは善の心も持っていた」という現実味のある設定を投入したのが本作だ。彼女のつらい過去、怒りと復讐、そして後悔を描く『マレフィセント』は、従来の悪役に人間味を吹き込んだ実験作だと言えるだろう。アクションシーンの迫力や衣装の美しさが支えるマレフィセントの想いに迫る物語を、ぜひ味わってみてほしい。
■放送情報
『マレフィセント』
日本テレビ系『金曜ロードショー』にて、9月19日(金)21:00~22:54放送
※本編ノーカット
出演:アンジェリーナ・ジョリー(深見梨加)、エル・ファニング(上戸彩)、シャールト・コプリー(てらそままさき)、レスリー・マンヴィル(福田彩乃)、イメルダ・スタウントン(福田彩乃)、ジュノー・テンプル(福田彩乃)、サム・ライリー(阪口周平)、ブレントン・スウェイツ(立花慎之介)
監督:ロバート・ストロンバーグ
脚本:リンダ・ウールヴァートン
製作:ジョー・ロス, p.g.a.
製作総指揮:アンジェリーナ・ジョリー、マイケル・ヴィエイラ、ドン・ハーン、パラク・パテル、マット・スミス、サラ・ブラッドショウ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
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