『眠れる森の美女』を観た後は楽しみも倍増? 『マレフィセント』が特別な一作である理由

ディズニーヴィランズの1人として、高い人気を誇るマレフィセント。彼女は『眠れる森の美女』(1959年)に登場し、生まれたばかりのオーロラ姫に「16歳の誕生日の日没までに、糸車の針に指を刺して死ぬ」という呪いをかける。9月19日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される『マレフィセント』(2014年)では、彼女がこの呪いをかけるに至った経緯が明かされる。
ここで注意したいのは、『マレフィセント』は『眠れる森の美女』につながるマレフィセントのオリジンストーリーではないということだ。本作のマレフィセントが悪に染まるまでの経緯やオーロラ姫との関係は完全にオリジナルのもので、オリジンストーリーを期待すると肩透かしを食らってしまうだろう。しかしアナザーストーリーならではの見どころもある作品だ。
プリンセスものとは一線を画すアクション

『眠れる森の美女』を思い出してみると、3人の妖精は小さな羽を持ち空を飛んでいたのに対し、マレフィセントには羽がなく、魔術的な緑色の煙を立てて姿を現したり消したりしていた。『マレフィセント』で明かされる過去の1つは、彼女にもかつて羽があったということだ。それもほかの妖精たちとは全く違う大きさで、高速で雲の上まで飛んでいけるような立派な翼だ。彼女が空を飛ぶシーンは、そのスピード感と迫力が目を引く。
このシーンだけで、マレフィセントがいかに強い力を持った妖精なのかがわかる。アクション・コーディネーターは『トゥームレイダー』シリーズや『Mr.&Mrs.スミス』(2005年)など、多数の作品でマレフィセントを演じるアンジェリーナ・ジョリーのスタントダブルを務めてきたユーニス・ハサートが手掛け、自然かつ力強いアクションを披露している。アンジェリーナ・ジョリーは前述の作品以外にも『ウォンテッド』(2008年)や『ソルト』(2010年)など、アクション映画への出演も多く、『カンフー・パンダ』シリーズに声の出演をするなど、アクション女優というイメージが強かった時期もあった。そんな彼女だからこそ、人間離れしたマレフィセントの動きも表現できたのだろう。
プリンセスものらしい美しい衣装

『マレフィセント』の大きな魅力の1つに、衣装の美しさという点も挙げられる。『眠れる森の美女』というプリンセスものを前提としている本作は、ファンタジーの雰囲気や中世ヨーロッパ風のビジュアルが魅力的だ。少女時代のマレフィセント(エラ・パーネル)の素朴な装いと独特な形の角は、純粋さのなかに強い力を秘めていることを感じさせる。大人になって悪に目覚める前のマレフィセントが着ているブラウン系のガウンは、力強い大地をイメージさせるデザインだ。
そしてよく知られているあの黒いマント姿も、実写にうまく落とし込まれており、特に角を含む頭を覆うターバンの質感、巻き方も非常に美しい。またオーロラ姫(エル・ファニング)の装いにも注目。本作はオーロラ姫が森で育つ姿を描くシーンがほとんどで、プリンセスらしく着飾ったシーンはほとんどないが、普段着のドレス姿も中世ヨーロッパ風のデザインが非常に魅力的だ。

衣装デザインのアンナ・B・シェパードは、『シンドラーのリスト』(1993年)や『戦場のピアニスト』(2002年)などの衣装を手掛けた人物で、その仕事を見ると『ハンニバル・ライジング』(2007年)や『イングロリアス・バスターズ』(2009年)、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)など、幅広いジャンルの作品でその手腕を発揮してきた。ファンタジー作品の仕事は初めてだったが、彼女は本作で3度目のアカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされた。





















