“令和版ロミジュリ”となった木村文乃&ラウール 『愛の、がっこう。』2人の幸せを願って

木村文乃&ラウール、“令和版ロミジュリ”に

 「令和版ロミオとジュリエット」との呼び声も高い『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)がついに最終回を迎える。

 本作は、格差と分断が進む現代の世相を反映したラブストーリーだ。大手企業の執行役員を務めた厳格な父のもとで育ち、聖職とも言われる教師の仕事に就いた愛実(木村文乃)と、複雑な家庭環境ゆえに義務教育もまともに受けられず、夜の世界でしか生きられなかったホストのカヲル(ラウール)。本来なら、交わるはずのない2人がひょんなことから出会い、愛実が識字に困難を抱えるカヲルに読み書きを、カヲルが奥手な愛実に恋愛を教える“個人授業”を通して惹かれ合っていく。

 だが、社会的立場や年齢、生きてきた環境など、何もかも違う2人は時にぶつかり、周囲からも反発を買う。そうした大きな隔たりを超えて、主人公たちが愛を掴み取るストーリーは恋愛ドラマの鉄板だ。ただ昨今、ホストという職業には世間から批判の目が向けられている。まさに今年6月にも過剰な営業行為を禁ずる改正風営法が施行されたばかりであり、純粋に2人の恋を応援できるのかという懸念もあった。

 また『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)の脚本家・井上由美子と演出家・西谷弘が手がける作品とあって、愛憎渦巻く泥沼劇を予感していた人も多いのではないか。しかし、蓋を開けてみれば、愛について問い直す繊細なストーリーであり、誰もが幸せな結末を願わずにはいられない仕掛けがちりばめられていた。

 前提として、本作はホストクラブのあり方を決して美化してはいない。それはカヲルが勤めるホストクラブ「THE JOKER」の看板ホスト・つばさ(荒井啓志)と常連客・明菜(吉瀬美智子)の関係からも明らかだ。「誰かの一番になりたい」という明菜の気持ちを利用し、お金を巻き上げていたつばさは最終的にあわや命を奪われそうになる。でも見方を変えれば、明菜も、大学に通いながらホストの仕事で起業資金を稼ぐつばさの状況に付け込み、お金で愛を買っていたわけで、2人の間に純然たる愛は存在しなかった。

 だけど、それは2人に限った話ではない。娘の愛実を大切に思うがゆえに鳥かごの中に閉じ込めていた誠治(酒向芳)や、愛実への執着や独占欲からカヲルという存在を排除しようとしていた川原(中島歩)もどこか歪んでいる。一方で、彼らにもまた確かに愛はあって。本作はどの愛が正しくて、どの愛が間違っているかという是非を問うのではなく、愛実とカヲルの姿を通して、一歩間違えれば、人を傷つけることもある愛の取り扱い方を一緒に学んでいく作品だった。

 その愛実とカヲルが実に魅力的なキャラクターだったのが、本作の一番の勝因ではないだろうか。愛実は父親のいいなりで生きてきた典型的な箱入り娘だ。ゆえに融通が利かない大人に成長した彼女は、恋人の心変わりを受け入れられず、ストーカー行為で警察沙汰を起こした過去がある。近頃、恋愛に興味が薄いヒロインが増えている中で、思いつめた顔で相手を待ち伏せしたり、留守電に泣きながらメッセージを残したりする激情型ヒロインは新鮮だ。

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