林遣都が“もう一人の主人公”に 『明日はもっと、いい日になる』が映す全員の成長物語

潮風が香るのどかな景色の中で、日々子どもたちのために奔走している人たちがいる。ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)は、子どもがいる・いないに関係なく“家族”の形を思い直すきっかけになると同時に、どんな人の心にもじんわりとした温かさをもたらしてくれる物語だ。
主人公は、「困っている人を助けたい」という一心で突っ走ってしまう性格の持ち主で、警察から児童相談所に出向させられてきた翼(福原遥)。その真っ直ぐすぎる正義感と勢いに誰もが置いていかれそうになるほどで、視聴者としてもそんな彼女の行く末を案じずにはいられなかった。しかし彼女は、蔵田(林遣都)とともに多様な形の家族と接し、人一倍の努力と共感力で、彼らをより良い方向に手引きする役割を果たせるようになってきた。
また、児童心理士の向日葵(生田絵梨花)と女子高生の物語や、チームのリーダーである蜂村(風間俊介)が父親として自分の子どもと向き合う物語など、職員と子どもたちの関係も様々な角度から描かれた。そしてそれらのストーリーが、視聴者にも“自分ごと”という意識を持たせてくれたからこそ、より入り込むことができたように思う。

主人公の翼の成長物語はもちろん毎回楽しみに観ていたが、そんな中で筆者が頭の片隅で気になっていたのは蔵田の過去だ。第1話では、あざをつけた少年を見て「助けないと」と焦る翼に「助けるとはいったい何を指していますか?」と怒りが滲んだ態度を見せたのが印象的だった。親と子を引き離すことが正しいとは限らない。深入りし過ぎるのも、家族のためにはならない。そう蔵田が厳しく翼に声をかけるのはどうしてなのだろう? と思っていた矢先、第3話で蔵田を自分の子として育ててきた丞(柳葉敏郎)によって、蔵田は昔、担当した家族に逃げられてしまった経験があることが明かされた。程よい距離感で慎重に家族と関わる彼の姿勢には、しっかりと理由があったのだ。
また、体に傷を負って「お父さん出して!」と叫ぶ幼い蔵田の姿がフラッシュバックされるなど、子ども時代の辛い経験も徐々に明らかになっていった。親から虐待を受けて9歳で児童相談所に保護された彼は、問題行動を繰り返して、最終的に丞の夫婦に引き取られたそうだ。論理的に見えるが、自分の経験を踏まえて子どもたちの目線、親の目線に立つことができる蔵田。時には熱すぎるくらいで、暴走してしまうこともあったが、そこには「辛い過去を誰かの希望に変えよう」とする気持ちがあった。

そして第10話では、蔵田がついに実の父親と対峙することとなった。父親からの謝罪を受けて過去の思いがこみ上げてきた蔵田は、頭の中だけで父親に復讐しながらも、それでも「許すことはできない」と面と向かって伝えた。血の繋がりがある父親に「もう二度と会わない」と言うのは、相当な覚悟が必要だっただろう。彼のことを育ててきた丞とその妻が、蔵田のことを愛おしく思っていることも伝わってくる回で、第2話で蔵田自身が強く訴えていたように「血の繋がりだけが家族の在り方ではない」ことが体現されていた。「ありがとう」という言葉でこれほど心を打たれたのは久々かもしれない。






















