八木勇征はなぜ“美しい”のか 『美しい彼』と『隣のステラ』に感じた“臆病さ”の演じ分け

少し違うのは、『美しい彼』がクールで俺様要素があったのに対し、『隣のステラ』では、美しさの中に「臆病な部分」が滲んでいたところだろうか。美しい彼に片思いをするという意味で似ている要素はあったものの、その違いを八木はきちんと演じ分けていると感じた。
映画を視聴して感じたのは、この作品は「役者の表情次第」で、色が変わると感じたことだ。映画を観る視聴者の多くは、主人公である千明に感情移入をして視聴するだろう。千明の目線で映画を観るとなると、昴の目、口の動きや些細なセリフも全部気になってしまう。
昴は表情がコロコロと変わるのに、その変化に違和感がない。自然体で八木が昴を演じていたからこそ、千明の目線で物語の世界に入りこめたし、最後までドキドキハラハラな展開を思う存分楽しめた。

八木の美しさは、見た目や演技だけではない。作品の「色」を美しく彩るオーラと、一度見たら忘れられない存在感も魅力だ。八木の憂いのある優しい眼差しに見つめられた人はみな、表情が不思議と柔らかになる。そして「この人に出会えて、本当に幸せ」といった恍惚の笑みを見せる。
八木は、演技も非常に丁寧で、静かな引力がある。だからこそ、演技が自然に見えるのかもしれない。八木はキャラクターの背景を丁寧に掘り下げながら繊細な演技を重ねるため、作品の展開にも説得力が生まれていく。
とくに印象的なのは、物語の後半に昴が主演映画の記者会見に登場するシーン。それまで、キラキラと輝く瞳で観客を魅了してきた昴が、その瞬間に見せた「寂しげな眼差し」は寂し気で、見ている人の胸を打つ。
昴はなぜ、あの場面で悲しそうな目をしていたのか。その理由は、物語のラストで明かされていく。千明と昴、ふたりの関係にどんな結末が待っているのか。衝撃のラストを、ぜひ映画館でその余韻まで味わってほしい。
■公開情報
『隣のステラ』
全国東宝系にて公開中
出演:福本莉子、八木勇征、倉悠貴、横田真悠、西垣匠、田鍋梨々花、清水美砂、宮崎吐夢、紺野まひる、野波麻帆、浜野謙太
原作:餡蜜『隣のステラ』(講談社『別冊フレンド』連載)
監督:松本花奈
脚本:川滿佐和子
制作:オフィスクレッシェンド
配給:東宝
©2025映画「隣のステラ」製作委員会
公式X(旧Twitter):@stella_eiga
Instagram:@stella_eiga





















