『あんぱん』に“のぶ”永瀬ゆずなが再登場する意義 朝ドラおなじみの“転生”を振り返る

永瀬ゆずなが『あんぱん』に再登場する意義

 ついにクランクアップを迎えたNHK連続テレビ小説『あんぱん』。放送はまだあと1カ月ほど続くが、もう撮影していないのかと思うと少し寂しさを感じる。半年間の放送は、長かったような短かったようなと、ドラマに出る側の人しか言っちゃいけない感想になるのはさておき、最後までしっかり見届けたいと思っているところ。

 ラスト1カ月を切る第22週「愛するカタチ」は、八木(妻夫木聡)が嵩(北村匠海)に詩集を出さないかと声をかけ、詩集『愛する歌』を出版することに。みんなの売れないだろうという当初の予想に反し、詩集はヒット。「いやいや、詩集じゃなくて漫画を!」とツッコミを入れたいところだが、どうやら『アンパンマン』に繋がる嵩の分岐点が描かれる模様。そんな中、注目を集めているのが、ヒロイン・のぶ(今田美桜)の幼少期を演じた永瀬ゆずなの再登場だ。

 2015年生まれの永瀬は現在10歳。これまで『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)で主人公・万木朝顔(上野樹里)と夫・桑原真也(風間俊介)の娘・つぐみを演じたほか(当時は加藤柚凪として活動)、川栄李奈主演の『となりのナースエイド』(2024年/日本テレビ系)や実写版『【推しの子】』(2024年)などにも出演。また、2026年春公開のアニメーション映画『映画 えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』で、主人公・ルビッチ役の声を担当することが発表されるなど、子役として着実にキャリアを重ねている。

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 そんな永瀬が演じた幼少期ののぶは、土佐の言葉で「男勝りの女子」という意味の“ハチキン”ぶりが、今よりももっと濃かったように思う。自分からぶつかったのに「気を付けや、ボケ!」と嵩(木村優来)を罵倒したり、「しゃんしゃん東京にいね(さっさと東京に帰れ!)」と嵩に言ってみたり(どんまい嵩……)。少々乱暴な言動もありつつ、嵩が病気で父(二宮和也)を亡くしていたことを知ったときには、「どんな気持ちながやろ。大好きなお父ちゃん、おらんなって、もう会えんらあて……」と相手の気持ちを想像する繊細な一面も覗かせる。また、大好きな父・結太郎(加瀬亮)にはベッタリであったところは、のぶのイメージキャラクターでもあり、しょくぱんまんにはメロメロな“ドキンちゃん”そのもの。(※)のぶの代名詞“ハチキンおのぶ”を体現した永瀬の演技力はもちろん、これらのエピソードはすべて初回放送であったことに改めて驚く。

物語序盤に登場する子役が別役で再登場するのが朝ドラ流

 今回再登場する永瀬は、『愛する歌』に救われたと柳井家を訪ねてくる小学生の女の子・中里佳保を演じる。本作の脚本を担当する中園ミホが、公式サイトでやなせたかしと文通していたことがあったと明かしているように、女の子は自身をモチーフにした役どころでもあると考えられる。(※)

 ちなみに、朝ドラにおいて、主人公の幼少期を演じた子役が、物語終盤に再登場することは決して珍しくはない。例えば、『おちょやん』(2020年度後期)では主人公・千代(杉咲花)の幼少期を演じた毎田暖乃が千代の姪役で、『らんまん』(2023年度前期)では主人公・牧野万太郎(神木隆之介)の幼少期を演じた森優理斗が万太郎の孫役で再登場している。さらに、『ちむどんどん』(2022年度前期)では、主人公・暢子(黒島結菜)ら兄妹の幼少期を演じた子役の稲垣来泉らが、最終回では孫役を演じた。サプライズ出演だったこともあり、「転生した!」と当時話題にもなった。再登場する場合は、血縁関係にあたる孫や姪などの設定が多いが、永瀬は全くの別人として再登場するのが今回の注目ポイントであろう。

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 他のドラマではあまりない子役の再登場。なぜ朝ドラは子役を再登場させるのか。その理由の一つとしては、放送期間の長さが挙げられるだろう。主人公の幼少期を演じた子役が別の役で再登場しても、違和感なく受け入れられるくらいの月日の流れが朝ドラにはあるのだ。また、物語の終盤に登場することが多いことから、最終回に向けて盛り上がりを見せていきたいなど、演出側の意図も少なからずあるようには感じる。

 もう一つ理由を挙げるとすれば、それは視聴者に芽生えた“親心”の回収ではないだろうか。子どもの成長は早いという言葉の通り、再登場する子役たちのほとんどは、身長が伸び、顔つきが変わる子さえいる。物語序盤を引率したあの演技をまた観たいと思うことはもちろん、「あの子、大きくなったな」と思わずにいられない視聴者の親心も、子役の再登場を後押ししているように思う。

 なんにせよ、のぶのハチキンぶりを見事に演じ切った永瀬が、どのような少女を演じるのか、期待は膨らむばかり。最後に、親目線を持つ視聴者として一言付け加えるなら、幼少期の嵩を演じた木村優来の再登場にも期待したい。

参照
※. https://www.nhk.jp/p/anpan/ts/M9R26K3JZ3/blog/bl/pAVY30dQeR/bp/pw0N7jEKPY/

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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