『鬼滅の刃』はなぜ“きょうだい愛”が重要? 幸せな家族から疎外された“子どもたち”の戦い

鬼殺隊の「柱」と鬼たちの総力戦を描き、大ヒットを記録している『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。劇中では、不死川玄弥が兄である“風柱”実弥を探すところも描かれており、ファンのあいだで話題を呼んでいた。
そもそも『鬼滅の刃』の内容を振り返ってみると、何かと“兄弟”や“姉妹”の絆が物語の軸に関わっている印象だ。本稿ではその理由について考えてみたい。

不死川兄弟以外でいえば、主人公の竈門炭治郎と禰󠄀豆子の関係も実の兄妹。炭治郎が鬼と戦うのは「禰󠄀豆子が人間に戻るための方法を探す」ことが目的であり、「柱」に禰豆子が処分されそうになるたびに自分の命をかけて守ろうとしてきた。
また“霞柱”時透無一郎には有一郎という双子の兄がいて、「刀鍛冶の里編」ではその記憶を取り戻すことで覚醒状態に陥り、上弦の伍・玉壺を撃破することに成功している。

“蟲柱”胡蝶しのぶと姉・カナエの関係も、物語上かなり重要。「無限城編」ではしのぶがカナエの命を奪った上弦の弐・童磨への敵討ちに挑むというエピソードが描かれていた。さらに孤児だったところを彼女たちに拾われて継子になった栗花落カナヲも、血縁はないが実質的には姉妹と言えるかもしれない。
同じように血縁抜きの関係では、鱗滝左近次のもとで学んだ冨岡義勇と錆兎、桑島慈悟郎に師事した我妻善逸と獪岳など、兄弟弟子のエピソードがいくつも描かれていることが印象深い。
そして「遊郭編」では、上弦の陸・妓夫太郎と堕姫という兄妹の鬼が登場。2人は強い絆を活かした連携によって、炭治郎たちを追い詰めるのだった。
ではなぜ作者・吾峠呼世晴は、ここまで兄弟や姉妹の絆にこだわったのだろうか。おそらくその理由は、同作が“幸せな家族”から疎外された者たちの話だったことに関わっている。




















