『愛の、がっこう。』ラウールが巧みに表現する“信じたい心” カヲルに芽生える愛実への愛

『愛の、がっこう。』“なりたい自分”のため

「私はいつまでお芝居を続けるのだろう」

 他人が求める自分と、なりたい自分。『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)第4話は、その狭間で揺れ動く愛実(木村文乃)とカヲル(ラウール)の姿が印象的だった。

 「バカじゃない」と初めて自分を肯定してくれた愛実を思わず抱きしめたカヲル。2人は“個人授業”の再開を約束し、上機嫌で家に戻った愛実は、百々子(田中みな実)と飲んできたと両親に嘘をつく。

 そんな愛実に疑いの目を向ける母親と、百々子の職業を理由に距離を置くよう助言する父親。彼らはそうやって愛実の自由を奪ってきたのだろう。愛実も今までは良い子のフリを続けてきたが、まさにその殻から脱皮しようとしている最中だ。

 個人授業の再開にあたって、佐倉(味方良介)から学習障害についてのレクチャーを受ける愛実。そんな中、川原(中島歩)の尾行がきっかけで、百々子にカヲルと会っていることがバレてしまう。「ホストなんか」という百々子の言葉に過敏に反応する愛実だが、かつては自分も「クズで悪魔で最低な奴」とホストを一括りにして批判していた。しかし、カヲルの生い立ちや人となりを知り、愛実の中で彼は“ホスト”ではなく“一人の人間”になったのだ。

 一方で、百々子が愛実を心配するのも分からなくはない。今の愛実は一言でいうとかなり危うい状態だ。「今度は宿題やるよ」と無垢な少年のような笑顔で約束しておきながら、授業をすっぽかすカヲルの手口にまんまと引っかかり、50万円もの大金をホストクラブで使った愛実は過去の二の舞を踏もうとしているようにも見える。百々子は思い立ったら一直線で、周りが見えなくなる愛実の性格を誰よりも知っているからこそ不安になるのだろう。

 そんな百々子の優しさに感謝しつつも、カヲルを信じたい気持ちを手放せないのは、おそらく教師というよりも一人の女性として。女性に興味がないと打ち明けた佐倉に愛実が語った「いろんな恋愛の形があっていいと思います」という言葉は自分に言い聞かせているように見えた。読み書きが苦手なカヲルに勉強を教える。それ自体は浮気でも何でもないのに、川原に本当のことを話せないのは、どこかやましい気持ちがあるからなのかもしれない。

 かたや、カヲルの中でも愛実に対する愛情が芽生えつつあるのを感じる。愛実を抱きしめた直後、唐突にホテルに誘ったのも、不器用な彼なりの精一杯の愛情表現だったのではないだろうか。逆に言えば、お金や体以外で愛情を示す方法を教わってこなかったということでもある。男に貢ぐ金をせびりにくる母親の奈央(りょう)や、大金と引き換えにホストからの愛情を買う女性客。そんな環境で育ったのだから、当然と言えば当然だ。愛実も彼女たちと同じだと思ってしまうのも無理はないのかもしれない。

 しかし、奈央の恋人(木原勝利)から「客は貢いで幸せになるバカばっかりだろ?」と言われた瞬間、カヲルから怒りが滲む。100万回以上の「バカ」を、愛実はたった一回の「バカじゃない」という言葉で上書きしてくれた。そんな愛実を他の客と一括りにされたくなかったのではないだろうか。愛実がホストクラブで使った金を返し、関わりを絶とうとするカヲル。それは愛実のためでもあり、愛実を信じたい自分のためでもある。信じたい、でも……という葛藤を乗り越えた先で、教師とホストという立場を超えた禁断の恋が始まるのだろう。

『愛の、がっこう。』の画像

木曜劇場『愛の、がっこう。』

井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。

■放送情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/aino_gakkou
公式Instagram:https://www.instagram.com/aino_gakkou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@aino_gakkou

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