こんな“木村文乃主演作”を待っていた! 『愛の、がっこう。』で塗り替えた主役像

7月も下旬へと入っていく頃。2025年の夏ドラマも出揃ったところだろうか。今期も多彩なラインナップとなっていて、注目作が目白押し。そのような中でも個人的にとくに気になっているのが、木村文乃が主演を務める『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)である。「こんな作品を待っていた!」と思ったりもしているのだが、同じような心持ちでいる方は多いのではないだろうか。
本作は、すれ違うことすらなかったはずの男女が出会い、大きな壁を越えて惹かれ合っていくさまを描くラブストーリーだ。木村が演じる主人公・小川愛実は、非常にマジメな性格の高校教師。古い価値観を持つ家庭で育ち、父・誠治(酒向芳)に勧められて教師になった。何かと親の言いなりになって生きてきた人物だ。現在は父の紹介で知り合った川原洋二(中島歩)と交際中だが、ふたりの将来について不安を抱えている。そんな中、愛実はホストのカヲル/鷹森大雅(ラウール)と出会った。いや、“出会ってしまった”というべきか。これまでの自分とは無縁だった世界で生きる彼の存在により、彼女の世界も一変していくことになるのである。

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を引き合いに出すのもはばかれるほど、この手の物語は繰り返し生み出され、いまでは世界中に溢れかえっている。“許されざる恋”というのはドラマになりやすいものだ。まだ物語は序盤とあって、ふたりの関係性が進展していくのはこれからの話。愛実は厳格な家庭で育ったが、カヲルもカヲルでとても複雑な家庭環境で育った。ふたりが特別な関係性を構築していく過程には、多くの困難や悲劇が待っているのだろう。

愛実がカヲルと出会い、言葉を交わし、互いの心に少し触れるたび、彼女には変化が生まれてきた。カヲルに対する敵意は薄れ、すでに彼女の中でカヲルは“女をたぶらかすような悪い男”ではなくなってきているのだろう。演じ手である木村の表情に注目し、その声音に耳を傾ければ分かるはずだ。とはいえ、長い時間をかけて積み上げてきた人間の性質というものはそう簡単には変わらない。このあたりの“心の揺れ”や心情の変化のグラデーションを、木村はどのように表現していくのだろうか。





















