『あんぱん』終戦の日まで怒涛の展開を迎えた第12週 今田美桜が渾身の芝居で伝えた“絶望”
1945年7月4日、午前2時前。アメリカ軍の超大型爆撃機「B29」125機が、高知市上空に襲来し、1時間にわたりおよそ1000トンの焼夷弾を投下。高知市街のおよそ半分が焼け野原となり、400人以上が亡くなったと伝えられている。
『あんぱん』と『エール』が表現した戦争と分断 戦後80年の今だから描く“加担者”の主人公
NHK連続テレビ小説『あんぱん』の戦争描写が話題だ。日中戦争が勃発したのが第6週なので、すでに戦時下に突入して5週目。こんなにも…高知の街に鳴り響く空襲警報、空から降ってくる焼夷弾。人々と一緒に逃げ惑うのぶは、助けを求める子供・なおき(二ノ宮陸登)の泣き声を聞き、逆方向へと走り出す。潰れた家の下で子供を見つけたのぶは、焼夷弾の落下音と爆発音の中で、「たっすいがーはいかん!ハチキンがついちゅうき、大丈夫や!」と必死に少年を励まし、炎上する街を走っていく。真っ直ぐな瞳からは教師として、ふと見せる泣き出しそうな表情からはのぶ自身に言い聞かせているようにも取れる。
そして1945年8月15日、終戦の日。玉音放送とけたたましくセミの鳴き声がピタッと止み、そこにはぼさぼさの髪に、すすだらけの顔、虚ろな瞳を瓦礫の街に向けているのぶが映し出される。時系列としては空襲の明け方、羽多子たちが高知の街に到着する前か、後と思われるが、これまで“ハチキン”が見せたことのない空虚となったのぶの表情が伝えるのは、信じていた正義が間違っていたことの絶望。その時間、実に12秒。本作で最も重要と言える週で、最後にヒロインが胸掴まれる芝居を見せてくれた。
『ブギウギ』『マッサン』『あんぱん』 朝ドラの“玉音放送”を通して描かれた女性像
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第12週では、太平洋戦争後期と終結が描かれる。敗戦の色が濃くなり、暮らしも貧しくなっていく中、軍…戦後の日本という新章へと突入する第13週「サラバ 涙」の予告には、のぶと嵩が入社する「高知新報」で出会う東海林明(津田健次郎)たちが登場。メイコと健太郎の再会も確認できる中で、印象的なのは嵩がのぶに伝える「正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから」という言葉。これからのぶや嵩たちが、“逆転しない正義”を見出していく。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK