いま改めて振り返る『ジョジョ』の凄み 受け継がれる“黄金の精神”から”漆黒の意思”へ
一方で、『SBR』のジョニィは「漆黒の意思」の持ち主として作中で描かれている。『SBR』7巻〜8巻で登場するリンゴォ・ロードアゲインとの戦いでそれは示されており、ジョニィが言及していた気高い「飢え」が、人として未熟な自分を聖なる領域へと高めてくれるという考え方だ。下半身付随で動けなくなったジョニィには、乗り越えるべきものがある。『SBR』は、ジョニィが歩き始める再生の物語――。
『SBR』がテーマとしているものに「正しい道」「納得」、そのほかにも「善と悪」がある。リンゴォは悪役ではあるが、きっと彼の中には揺るぎない正義がある。その意志には迷いがなく、躊躇なく行動できる人物。例えばそれは、第5部に登場するプロシュートのように。『SBR』における“ラスボス”が、自身の「正義」を誇示するように、善悪を超越した人を惹きつける凄みを『SBR』を通して改めて痛感する。
なお、リンゴォ戦は、『SBR』ひいては『ジョジョ』シリーズにおいても屈指の名バトルであり、荒木の作画がさらに覚醒する、あらゆるターニングポイントにある。そもそも馬に乗ったレースをアニメで表現すること自体が「厳しい道を行く」ことであるのは間違いないが、リンゴォ戦以降の作画をどのように描いていくのかという点も、今回のアニメ化での注目ポイントと言えよう。
『JOJODAY STAGE』を観ていて面白かったのは、キャスト陣が『ジョジョ』との出会いを振り返る際に、途中の部を入り口にして第1部から読み始めるというパターンがほとんどだということ。筆者も例に漏れず、第6部の連載開始時に『週刊少年ジャンプ』を手に取り、そこから第1部へと進んでいった一人。今回の『SBR』のアニメをきっかけにして、アニメシリーズ、もしくは原作を手に取る新たなファンも大勢いることだろう。そこには連綿と受け継がれる血統と意志、そして人間讃歌が描かれている。