『あんぱん』では複雑で多面的な役柄に 瀧内公美、冷静な自己分析で歩んできた俳優人生
2017年には代表作となる映画『彼女の人生は間違いじゃない』に主演。福島の仮設住宅から渋谷のデリヘルにアルバイトへ行くという役を演じた。2019年の『火口のふたり』では、結婚を控えながら、柄本佑演じる元彼と性愛の限りを尽くすという大胆な役に挑む。この演技により、瀧内は第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞や第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞している。しかし、ここで瀧内は自分に「大胆な女優」というレッテルがつくことに違和感を抱く。「次は濡れ場から脱却したい」と、2021年には社会派映画『由宇子の天秤』でドキュメンタリーディレクターを演じ、第31回日本映画批評家大賞主演女優賞、第31回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞など、数多くの賞を受賞することになる。以降は、テレビドラマにも活躍の場を広げ、前述の大河ドラマのほか、『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)など出演作が続いている。
瀧内公美&高良健吾『彼女の人生は間違いじゃない』インタビュー 瀧内「脱ぐことが表現の一部だと感じた」
『ヴァイブレータ』『さよなら歌舞伎町』の廣木隆一監督が自身の小説家デビュー作を自ら映画化した、『彼女の人生は間違いじゃない』が本…『あんぱん』の黒井雪子という役について、瀧内は『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 あんぱん Part1』で「軍国主義の時代であり、女性教師の少ないころですから、黒井は非常に優秀な女性だったのだと思います。厳しい人に見えますが、この時代では当たり前のこと」と、これもまた客観的に役を分析している。面接試験のシーンでも、のぶが「家族みんなに苦労をかけて、1人だけ進学させてもらう資格がこんな私にあるがかないがか正直……」と答えるのに対し、「ここは悩みを相談するところではありません」と一刀両断。甘えなど寄せつけない厳しい教師であることを印象付けた。
『あんぱん』の登場人物は、『アンパンマン』のキャラクターを想起させるものになっているが、黒井雪子は「くろゆき姫」であろうか。やはり恐ろしい魔女的なキャラなのかと思いつつ、瀧内は『NHKドラマ・ガイド』で「最初の収録が、実は2年間指導したのぶとの別れの場面でした。のぶの顔を見たら不意に涙が止まらなくなって。我が子を送り出すような気持ちが強いと、黒井の厳しさが崩れてしまうと困りましたね」とも語っており、複雑で多面的な役柄であることも示唆されている。瀧内の背筋が凍るような怖さと、どこかあっけらかんとしたゆるさも感じる演技に期待したい。
参照
https://bunshun.jp/articles/-/72223
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK