ファン・ジョンミンの“渋み”が絶妙 『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』は“韓国娯楽活劇”新たな傑作
一方で新人刑事役のパク・ソヌ(チョン・ヘイン)は、洗練された総合格闘技スタイルだ。個人的に格闘シーンで感心したのが、雨の中で寝技主体の格闘をするシーンである。地面に体をつけての取っ組み合いは、どうしても地味なりがちだ。しかし雨が降っている中だと、一手ごとに水滴が飛び散るせいか、かなりドラマチックに見えた。他にも「危なっ」「痛っ」と、思わず声を出してしまいそうなスタントも多く、熱血刑事の人情ドラマであると同時に、アクション映画としての満足度も非常に高い。さすがアクション野郎、リュ・スンワン監督である。情熱と若さだけで突っ走っていた頃……たとえば『相棒 シティ・オブ・バイオレンス』(2006年)の頃を知っているだけに、近年の活躍は感慨深い。
前作から10年。主役のファン・ジョンミンは54歳。かなりのブランクがあいているが、それが全て良い方向に作用している。アクションの演出は面白さを増しているし、今回のファン・ジョンミンは熱血刑事であると同時に、家庭問題で悪戦苦闘する父親としての“渋み”と“所帯じみ”がよく出ていた。保護者会の気まずい感じや、思春期息子との距離感は絶妙だ。そして、あれだけの大騒ぎをしたすえの、あの家庭的にも程がある一瞬を切り取った終わり方! 庶民のヒーローらしい、絶妙にユーモラスでハッピーな締めだった。
日頃の鬱憤を晴らすストレス解消映画でもあるし、仕事の現場で「つらいけど、しっかりやんねぇとなぁ」のマインドで頑張る全国の庶民を勇気づける作品でもある。またしても韓国娯楽活劇に新たな傑作が加わった。
■公開情報
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』
新宿ピカデリーほかにて公開中
出演:ファン・ジョンミン、チョン・へイン、アン・ボヒョン、オ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフ、シン・スンファ
監督:リュ・スンワン
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ、カン・ヘジョン
提供:KADOKAWA Kプラス、MOVIE WALKER PRESS KOREA
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
118分/英題:I, The Executioner
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