本作のもうひとつの主役は、物語の舞台となる4人が暮らす村の美しい自然だ。「日本の四季をぜいたくに、たっぷり過ぎるほど味わえる」というモノローグのとおり、四季折々の日本らしい風景が繰り返し映し出される。4人の名前が四季にちなんでいるように、かけがえのない自然はこの作品の中で大きなウェイトを占めている。

　本作は「泣ける」と評判のヒット作と共通点が多い。現在公開中の映画『366日』も、沖縄の海などの美しい自然を背景に、主人公2人をはじめとする登場人物たちのお互いの幸せを思う気持ちが多くの観客の胸を打っている。自然の風景の中で織りなす友情の物語という意味では、青春映画の名作といわれるアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』とも共通している。また、特攻隊と女子高生の悲恋をテーマにした映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』も、理不尽なまでの困難を前にお互いを思いやる2人と周囲の人々を描いた作品である。

　かけがえのない美しい自然、打算のない純粋な友情や恋、理不尽なまでの困難と葛藤、そして誰かの幸せを思う気持ち。作品の中でこれらの要素が重なったとき、劇場にいる観客の心を揺さぶり、涙を誘う。今、「泣ける」作品を観たいのなら本作をおすすめする。クライマックスで彼らが「魔法」をどのように使うのか、その選択はスクリーンで確かめてほしい。

■公開情報
『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
全国公開中
出演：八木勇征（FANTASTICS）、井上祐貴、櫻井海音、椿泰我（IMP.）ほか
原作・脚本：鈴木おさむ
監督：木村真人
企画＆制作プロダクション：共同テレビ
配給：ポニーキャニオン
©映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』製作委員会
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