『御上先生』“御上”松坂桃李を変えた兄・宏太の死 生徒との触発がドラマの推進力に
千羽鶴は御上の母の病室に飾られていたもので、養護教諭の一色(臼田あさ美)が御上を隣徳に呼んだ。一色は御上と旧知の仲で、宏太の死を経験していた。御上自身が「Personal is political」の当事者だったわけだが、長い間、向き合えないくらい宏太の死の衝撃は大きかった。正確に言うと、向き合おうと努力したができなかったかもしれない。
御上が過去を直視しようともがいたことは、決して無駄ではなかったと思う。なぜなら隣徳に来ることができたからだ。御上が生徒にかける言葉は、一言ひとことが時間をかけて自らに問いを発し、思索を重ねた結晶である。御上は3年2組の生徒たちと向き合う中で自分自身を知り、変わるきっかけをつかんだように思える。
ともすると教育は力関係が固定化し、マンネリ化に陥りがちである。けれども教師は、本人にその気があれば、いくらでも変わることができる。生き直すとも言い換えられるが、自分が教え伝えたことが、子どもたちを通して何倍にもなって返ってくる。教育とは人間同士が触発し合うプロセスである、という作品の芯にあるものを伝えていた。
御上がやろうとしているのは、隣徳と文科省、永田町の裏のつながりを明らかにすること。中岡(林泰文)と塚田(及川光博)の会食には、学年主任の溝端(迫田孝也)が同席。元官房長官の孫を優遇する相談で、古代(北村一輝)の動向に注意を払う。中岡と関係を深めたい槙野(岡田将生)はそこにいない。槙野は教育行政に批判的な見解を披露するなどやや微妙な立ち位置で、仲間から外された可能性もある。権謀術数を駆使する彼らの行く末にも注目したい。
「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かうオリジナル学園ドラマ。
■放送情報
日曜劇場『御上先生』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:松坂桃李、奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流、吉柳咲良、豊田裕大、上坂樹里、髙石あかり、八村倫太郎、山下幸輝、夏生大湖、影山優佳、永瀬莉子、森愁斗、安斉星来、矢吹奈子、今井柊斗、真弓孟之、西本まりん、花岡すみれ、野内まる、山田健人、渡辺色、青山凌大、藤本一輝、唐木俊輔、大塚萌香、鈴川紗由、芹澤雛梨、白倉碧空、吉岡里帆、迫田孝也、臼田あさ美、櫻井海音、林泰文、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
脚本協力:畠山隼一、岡田真理
演出:宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデュース :飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修:西岡壱誠
学校教育監修:工藤勇一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs/