『相続探偵』赤楚衛二が抱えている過去を想起させる台詞 朝永が灰江にお金を貸すワケ
それでも諦めきれず、調査を続ける灰江と朝永はついにマリーアントワネットの正体に辿り着く。その人はソフィーにも深く関係している人物だった。ソフィーとは家族の間での愛称で、本名はみゆき。フランス国王ルイ16世にソフィーという名の娘がいたため、彼女は自分の愛称にちなんで保護猫カフェの店名を「ルイ16世」にしたのだ。そして、ルイ16世の妻でソフィーの母は王妃マリーアントワネット。みゆきの母もマリーアントワネットという名前で、かつて香車が再婚を考えた相手だった。香車が灰江に見られることを嫌がっていたコーヒーの缶からは、その時に書いた婚姻届が出てくる。マリーは結局、他の人と結婚し、みゆきを設けたが、香車はずっと彼女のことを思っていたのだろう。マリーが運営する動物保護団体に、彼は匿名で支援しており、遺産も寄付しようとしていたのだった。
第三者からすると美しい真実だが、金斗の目線に立つと少し見え方が変わる。一人息子の自分ではなく、好きだった人に財産を託すのか、と文句も言いたくなるだろう。しかし、香車の遺言書には金斗への愛情も隠されていたのだ。というのも、香車がマリーとの再婚を諦めたのは、当時14歳だった金斗が亡き母への思いから反発したためだった。香車はあのコーヒー缶に、婚姻届とともにマリーへの気持ちを封印したのだろう。金斗のために。
また香車は金斗が学生時代に起業した会社の株を、自身の兄名義で買っていたことが明らかになる。金斗が取材された新聞記事も切り抜き、スクラップしていた。遺産を残さなかったのも、金斗には必要ないと思ってのこと。香車は誰よりも息子のことを応援していたし、尊敬してもいたのだ。後日、灰江とともに会いに行ったマリーも「あの人は昔からあなたのことを一番大事に思ってたから」と証言する。
遺産の代わりに自分のことを嫌っていると思っていた父親の愛情を受け取った金斗。香車が残した財産は遺言通り、すべてマリーに遺贈され、猫のまり坊は金斗が育てていくことに。めでたしめでたしだが、やはり切なさは残る。似た者親子である香車と金斗はどちらも不器用で、生きているうちにわかり合うことはできなかった。「親孝行したい時に親はなし」という灰江の台詞に胸がチクリと痛む。
一方、今回奮闘した朝永もソフィーに夫がいることがわかり失恋。人生はままならないものだ。灰江がいつもコーヒー豆を食すのは、人生の苦さをコーヒーの苦さで相殺するためなのかも…とも感じた。自分が灰江に貸しているお金は軍資金であり、「ヤツの敵は俺の敵でもある」という朝永の意味深な言葉も気になるところ。灰江が抱えている過去は、苦いというレベルではなさそうだ。
『イブニング』で2021年から連載中の西荻弓絵と幾田羊による同名漫画を実写ドラマ化するヒューマンミステリー。『SPEC』シリーズなどを手がける原作者の西荻自ら脚本を担当する。
■放送情報
土ドラ9『相続探偵』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:赤楚衛二、桜田ひより、矢本悠馬、落合モトキ、石井正則、渋川清彦、三浦貴大、加藤雅也
原作:『相続探偵』原作・西荻弓絵/漫画・幾田羊(講談社『モーニング』所載)
脚本:西荻弓絵
演出:菅原伸太郎、長沼誠ほか
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:島ノ江衣未、石井満梨奈(AX-ON)、本多繁勝(AX-ON)
協力プロデューサー:次屋尚、吉川恵美子(AX-ON)
音楽:佐藤航、Gecko&Tokage Parade
制作協力:日テレアックスオン
©日本テレビ
©西荻弓絵・幾田羊/講談社
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