ビートルズへのオマージュも? 『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』特報を解説

特報映像のここに注目!

「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」特報|2025年夏劇場公開!

 では『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の気になるところをみていきましょう。

 まず頭に入れておいてほしいのは、以下です。

  1. この映画の世界はMCUの神聖時間軸(EARTH-616)とは別のバースであり、舞台は
    レトロフューチャーなもう一つのアメリカの1960年代。したがってアベンジャーズなどのヒーローはいない。
  2. すでにこの4人は“ファンタスティック・フォー”として活躍しており、世間にも認知されている。

 こうした中、スーを中心にファンタスティック・フォーの面々の姿が描かれます。まずこの4人が住むのは、コミック同様バクスター・ビル。ここが彼らの住居であり、研究所であり、基地です。シングと料理を作っているかわいいロボの名はハービー。H.E.R.B.I.E.(Humanoid Experimental Robot, B-Type, Integrated Electronics)で、統合電子機器B型ヒューマノイド実験体ロボット、みたいな意味です。実はこのハービーは1978年のアニメ版でデビューしたキャラで、ヒューマン・トーチの代役としてファンタスティック・フォーのメンバーになり、後にコミックにも登場するようになります。コミックではリードとスーの間に生まれたフランクリンという男の子の育児ロボとしても活躍。ハービーが出るということはフランクリンも登場?(このフランクリンというのはマーベルにおいて結構重要なキャラです)

 ところでこのベンですが、その姿に驚きました。20世紀フォックス版のベンに比べて、より初期コミックのルックスに近づいた感じです。このあと帽子とトレンチコートを着たシーンも出てきますが、これもコミックの中の名場面とそっくり。ベンの再現度がすごい。40秒目からのリードのセリフで4人が超人になったいきさつが語られます。今回の映画はこのオリジン(誕生秘話)をじっくり描くのではなく、すでに彼らが超人となっているところから語られます。したがって彼らのオリジンはこういう回顧シーンで描かれるのでしょう。

 1分20秒目に登場する白髪の男。演じているのはジョン・マルコヴィッチです。彼の役はレッド・ゴーストと言われています。コミックではソビエト連邦(いまのロシア)の科学者でファンタスティック・フォーのことを研究し自ら宇宙線を浴びて自分の身体を非実体化する力を手に入れます。もしかすると今度の映画は、別バースの1960年代が舞台になりそうなので“ソビエト連邦”がまだある世界なのかも。では彼が今回のメインヴィラン? 

 1分21秒目からニューヨークを覆う黒い影。自由の女神を見下ろす巨大な何かの後ろ姿。兜をかぶった巨人? そう、これが本作のメインヴィランとされる宇宙魔神ギャラクタスです。プラネット・イーター(惑星を喰らう者)と呼ばれ、星を砕きそれをエネルギーとするすごい奴です。こいつが地球を捕食しに? このギャラクタスとファンタスティック・フォーの攻防はコミックの中でもワクワクするエピソードです。20世紀フォックス版の『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』でこのエピソードは描かれるのですが、この時はギャラクタスを雲のようなエネルギー体として表現していました。個人的にコミックに忠実な、いかにも宇宙魔神なギャラクタスをスクリーンで観たかっただけに、これは期待大です。

 劇中走る青い車。このデザインがレトロフューチャーな1960年の世界を象徴していますが、ファンタスティック・フォーの面々は後に“ファンタスティッカー”という空飛ぶ車に乗ります。この車がそうなるのかな?

 この特報映像ではギャラクタスの使いであるシルバーサーファー、ドクター・ドゥームの姿は出てきませんが、リードのスーパーパワーである、伸縮自在でゴムのように伸びる身体を表現するシーンも出てきません。その代わりリードが黒板に難しい数式を書いており、彼が天先科学者であることがわかります。その黒板のシーン、リードの背中のあたりにEntrance (入口) Exit(出口), Another Universe(別バース)と書かれているのがうっすら見えます。つまりリードはマルチバースの研究をしている? そしてこれが次の『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』でEARTH-616の、つまりMCUの他のヒーローと出会う伏線?(コミックでリードはブリッジというマルチバース間を覗き見る装置を作ります)

 個人的にささったのは映像の最後の方で4人が、矢印を模したセットかなんかに立っているところ。これはビートルズがアメリカのTV番組『エド・サリヴァン・ショー』で演奏した時のオマージュ。

 ファンタスティック・フォーのコミック界への登場とビートルズの音楽界への台頭はほぼ同じ。カルチャーの歴史を変えた4人という意味で、ビートルズとファンタスティック・フォーは似たような存在です。

 そして子どもたちがベンのお面を被っているところ。他のメンバーと違い、ベンだけが普通の人間体の姿に戻ることができません。つまりずっと怪物のような容姿です。それ故ベンは悩むのです。しかしさりげないこのシーンでベンが子どもたちにヒーローとして愛されていることがわかります。

なぜ“ファースト”なのか?

 今回『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』ではなく『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』表記になったのは、恐らく20世紀フォックス版の『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』『ファンタスティック・フォー』との混同を避けるためでしょうか?

 そして副題の“ファースト・ステップ(原題は『FIRST STEPS』と複数形)”ですが、ここで思い出すのが、映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』です。あの映画では第二次世界大戦に舞台を設定することによって、映画的には後からデビューしたキャプテン・アメリカをアイアンマンたちよりも先に活躍していたMCUヒーローとして描きました。これによりキャプテン・アメリカをヒーローたちの先輩格として印象付けることに成功。だから『アベンジャーズ』などにおいてキャプテン・アメリカをリーダー的ポジションに置くことができました。同じようにファンタスティック・フォーはコミックにおいてリスペクトすべきマーベル最初のヒーローファミリーであるが、すでにMCUではアベンジャーズをはじめたくさんのヒーローがスクリーンデビューしている。

 ここに彼らを“割り込ませる”ために、別アースで1960年代から活躍しているという設定を使ったのではないかと思います。そして『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を経て『アベンジャーズ』でキャプテン・アメリカが主導的役割を務めたように、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』を経て『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』でファンタスティック・フォーが主導的役割を務めるのではないかと思います。

 この特報映像、スーの最後のセリフやキャッチコピーの「“あの家族”が待っている」からもわかるように、“家族”を強調しています。やはりファンタスティック・フォーは家族ドラマなのです。僕も早く、“この家族”に会いたいです。

■公開情報
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』
2025年夏公開
出演:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、ジョセフ・クイン、エボン・モス=バクラック
監督:マット・シャクマン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

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