板垣李光人×中島裕翔の目を奪われる美しさ 『秘密』が描く“知ること”の本当の意味

 死んだと思われていた露口の長女・絹子(夏子)。露口の死刑執行からほどなくして姿を現した彼女は、薪と鈴木を責め、第九を執拗に罵る。それは薪が露口の脳を観たことが原因だった。ネタバレになるので詳細は本編をご覧いただくとして、絹子の台詞はMRI捜査の問題点を的確に突いて、逆説的に第九の存在意義を証明していた。さらに、そこから本作が背負うテーマを浮き彫りにする。

 想像力を飛躍させて本作が描こうとするものは何だろうか。たとえ連続殺人犯であっても、内心の自由を否定することはできない。知るという行為は不可逆的だ。「知る」とはこの世界に存在する事象を認識することであり、目線が過去に向いている。起きてしまったことは変えることができず、真実を知った時、人はその重みに耐えることができない。秘密を踏みにじった自分を責め、誰も救えないと薪が自身をさいなむ時、その意識は知るという原罪に向けられている。

 旧約聖書の創世記で、知恵の実を食べた人間はエデンの園を追われ、死すべき命となった。死者の脳から生前の記憶を取り出すMRI捜査は、あたかも神に背くようであり、裁くことのできない罪を明らかにする。禁断の扉を開けた先では、過去と現在が等価に交わる。初回にしてすでに薪と鈴木、雪子(門脇麦)、貝沼の間に意図と視線の交錯が見て取れた。登場人物が織りなす愛憎さえ、本当の意味で知ることができるのは、その人が亡くなった時だ。失うことは知ることであり、ドラマ版の『秘密』は二度と戻らない今を記憶に刻みつける。

■放送情報
『秘密~THE TOP SECRET~』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:板垣李光人、中島裕翔、門脇麦、高橋努、鳴海唯、利重剛、眞島秀和、國村隼ほか
原作:清水玲子『秘密-トップ・シークレット-』『秘密 season0』(白泉社『メロディ』連載)
脚本:佐藤嗣麻子
演出:松本佳奈、宝来忠昭、根本和政、稲留武
プロデューサー:豊福陽子、近藤匡、近藤多聞
音楽:小島裕規“Yaffle”
主題歌:「Iris」BUDDiiS(SDR inc.)
制作協力:C&Iエンタテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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